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特定少年の推知報道に抗議し、改正少年法第68条の撤廃を改めて強く求める会長声明

2022年06月27日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

2021年5月21日、「少年法等の一部を改正する法律」(以下「本改正法」という。)が可決成立し、本年4月1日に施行された。本改正法は18歳または19歳の少年を「特定少年」と定義したうえで、同法第68条は、特定少年のときに犯した犯罪について公判請求された場合に、少年の氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等により当該事件の本人であることを推知することができるような報道(以下、「推知報道」という。)の禁止を解除した。
本改正法については、参議院の法務委員会において、「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、事案の内容や報道の公共性の程度には様々なものがあることや、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」との附帯決議がなされており、衆議院の法務委員会でも同様の附帯決議がなされている。
しかしながら、本年5月14日、東京地検は江戸川区で交際相手を殺害したとして殺人罪に問われている事件について、公判請求するとともに、被告人となった19歳の少年の実名を公表し、これをふまえて報道機関が推知報道を行った。本年4月の山梨県、大阪府における特定少年の実名公表、推知報道に続くものである。本改正法施行から間もない時期に、このようにたて続けに検察庁によって特定少年の実名が公表され、これに基づいて推知報道が行われている現状は、上記付帯決議の「特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮」がなされているとは到底いえない。
いったん少年の実名等が公表され、報道がなされると、インターネット上にデジタルタトゥーとして半永久的に情報が残され、少年の更生の機会を奪い去るおそれが極めて強い。本改正法において、18歳・19歳の少年にも少年法を適用した趣旨からすれば、18歳・19歳の少年も、17歳以下の少年同様、その可塑性に鑑み、十分な更生の機会が与えられる必要がある。
当会はこれまで、本改正法に関し、2020年11月25日に「少年法適用年齢に関する法制審議会答申に反対する会長声明」、2021年6月4日に「少年法『改正』に関する会長声明」、本年3月7日に「『改正』少年法に関する意見書」を発出し、繰り返し推知報道の禁止を要請してきた。また、2021年6月21日に少年事件の実名等の報道を強く抗議する会長声明を発出した。
当会は、特定少年の健全育成及び更生に十分配慮することなく、検察庁により特定少年の実名が公表され、報道機関による推知報道が行われていることに強く抗議し、特定少年の実名等の公表及び推知報道を行わないことを強く求める。
また、このような配慮のない推知報道がなされている現状に鑑みれば、当会はあらためて、本改正法第68条を撤廃することを強く求める。

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