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日本学術会議法の改正の再考と任命拒否を撤回することを求める会長声明

2023年03月22日

東京弁護士会 会長 伊井 和彦

2022年12月6日、内閣府は「日本学術会議の在り方についての方針」(以下「方針」という)を発表した。現在開催されている通常国会に、方針に基づく日本学術会議法(以下「法」という)の改正法案が提出される可能性が高いと報道されている。
方針は、「会員等以外による推薦などの第三者の参画など、高い透明性の下で厳格な選考プロセスが運用されるよう改革を進めるとともに、国の機関であることも踏まえ、選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」とする。
当会は、2020年10月22日付「内閣総理大臣に対し、日本学術会議が推薦した会員候補者を自らが任命しなかった理由を説明し、法の規定を遵守した任命手続きをとることを求める意見書」(以下「意見書」という)で、日本学術会議に政府からの独立性が認められている(法第3条)のは、背景に学問の自由(憲法第23条)があることを指摘し、かつての国会答弁でも内閣総理大臣の任命行為は形式的なものに過ぎないとされていたことを踏まえ、内閣総理大臣は、日本学術会議が指名した会員をそのまま任命すべきであるとした。
当会の意見書の指摘にもかかわらず、方針は、国の機関であることを踏まえて会員の推薦・選考に第三者の参画を導入するというのであるから、日本学術会議の独立性をより低下させる意図が明確に読み取れる。
さらに方針は、「外部評価対応委員会の機能を強化し、構成及び権限、主要な評価プロセスを明確化すること等により、活動及び運営についての評価・検証が透明かつ厳格に行われることを担保する」とする。
しかし、外部評価対応委員会は、外部評価の実施に係る事項に対応するための委員会(外部評価実施規程第2条第1項)であり、この機能を強化することによって、外部評価有識者による意見の影響が強まり、ひいては日本学術会議の活動・運営に関する自律性が損なわれるおそれがある。
このように方針は、日本学術会議の独立性と活動・運営の自律性を損なうものであり、ひいては研究者等を萎縮させ学問の自由を危うくするものである。
当会は、岸田文雄内閣総理大臣に対し、方針に基づく改正法案を提出するのではなく、当会が意見書で求めたように、2020年10月1日の日本学術会議会員任命拒否を速やかに撤回し、同会議の推薦どおりに会員を任命するよう、強く求める。

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