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憲法記念日にあたっての会長談話

2023年05月03日

東京弁護士会 会長 松田 純一

1947(昭和22)年5月3日に日本国憲法が施行され、今年で76周年を迎えます。
私たちの憲法は、先の大戦で破壊され、疲弊しきった市民生活を取り戻すことに必死で、まさに、いきいきと生きること「生」が渇望された、そのような時代に誕生しました。
主権者である国民が制定した憲法は、市民が実感した戦争の惨禍を踏まえて、戦争を放棄することに「生」への希望を見いだし、国民一人ひとりが国に大切にされるべき存在であるとして基本的人権の尊重の原理を定めました。
そして今、「生」をどのように実現するのかに焦点が当たっています。
ウクライナでは、昨年2月のロシアによる軍事侵攻によって始まった軍事行動が今なお継続しており、「生」への欲求が切実に高まっています。そのような状況下、日本国内では、「現実的な安全保障」の名目で敵基地攻撃能力が議論され始めています。しかし、戦争を仕掛ける口実を与えないよう、国際社会で共存していくための「平和外交」による安全保障の確保に向けたたゆまぬ努力は継続すべきです。私たちは「生」をどのように実現するのかの判断の岐路に立っています。
長く続いた新型コロナウイルス禍は、新型コロナウイルスが本年5月8日に5類感染症に移行することから、ひとつの区切りを迎えるものとみられます。約3年に及ぶ自粛生活は、市民生活に重大な障害をもたらしました。これまで感染防止対策が前面に出された結果、制限され後景に押しやられてきた生存権(第25条)、学習権(第26条)、財産権(第29条)、営業の自由や移動の自由(第22条)等の基本的人権の回復をどのように図るのかが重要な課題です。これらの人権を取り戻すことは「生」の実現であるはずです。
憲法は、「個人の尊重」(第13条)を定め、国民それぞれが多彩な「生」を営むことを認め、国がそれを応援すべきことを定めています。高齢者・障害者・外国人・LGBTQなど多様な人々を対象としたダイバーシティ&インクルージョンの推進、とりわけ、ジェンダー平等の確保や同性婚、選択的夫婦別姓への理解とその対応は、多彩な「生」を実現するために不可欠な前提です。自分と違う「生」には違和感や拒絶感を感じがちですが、一人ひとりが自分らしい「生」を獲得するためには、相互の理解と寛容、受容が欠かせません。そうした社会のあり方こそ、活力ある、魅力的な社会であると考えます。
私たち東京弁護士会は、これからも憲法の価値を支え、広げ、市民の「生」の護り手としての立場を堅持いたします。また、必要な法的支援を提供するなどして、皆様からの期待、要望にお応えすべくよりいっそう邁進いたします。

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