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子どもとその家族に対する在留特別許可に関する会長声明

2023年11月22日

東京弁護士会 会長 松田 純一

本年8月4日、出入国在留管理庁は、「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」を発表し、日本で生まれ育った非正規滞在の子どもの一部について、その家族もともに在留特別許可をする方針としたことを公表した。対象となる人々の人権状況を改善する第一歩として、当会はこれを歓迎する。
在留特別許可については、本年6月に成立した出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)等を改定する法律(以下「改定法」という。)が施行された場合には、改定法による改定後の入管法の下で新たなガイドラインが策定されることが見込まれている(改定法参議院法務委員会附帯決議14項参照)。
当会は、この新ガイドラインを国際人権法の諸原則に沿ったものとすること、特に、子どもの最善の利益(子どもの権利条約第3条)を判断の中心に据えることを求める。
具体的には、まず子どもの定着性を判断し、日本に一定程度の定着がみられる場合には、在留特別許可をすべきである。日本生まれでなくても、日本の学校に通い日本語しか話せないような子どもも多くいることから、子どもの定着性は、日本で生まれた場合のみならず、比較的低年齢で来日した場合には、短期間であっても認められるべきである。
その上で、子どもの父母から分離されない権利(同条約第9条第1項)や家族として保護される権利(自由権規約第23条第1項)の観点から、子どもを監護する親をはじめ家族全体に対しても在留特別許可をすべきである。家族の構成員に消極事情がある場合には、家族を分離させるほどの事情かどうかという観点から、在留特別許可の可否を判断すべきである。このとき、子どもは親や家族を選んで生まれてくることはできないのであるから、親や家族の行為の責任を子どもに負わせるべきではないことに留意が必要である。また、入国経緯や不法就労については、本来難民認定されるべき事情の下、本国での迫害を逃れて来日し、子どもを育てるためにやむなく就労したような場合でも、国際基準を逸脱した現在の日本の難民判断基準では難民認定されないことが多いのであるから、その具体的事情を考慮し、消極要素として重視しすぎないようにすべきことにも留意が必要である。
加えて、子どもが日本国籍や特別永住者、または何らかの在留資格を保有する場合には、子どもの利益のために、その家族について在留特別許可がされるべきであるし、比較的低年齢で来日した者については、仮にその後、本人が成人したとしても、その定着性を考慮し、広く在留特別許可をすべきである。
子どもは、いかなる差別も受けることなく、家族とともに生き、成長する権利を有する。その権利を守る第一義的責任は、子どもが現に生きている社会にこそある。当会も、基本的人権の尊重と社会正義の実現という弁護士法第1条第1項の使命を果たすべく、在留特別許可制度の動向を注視し、子どもたちとその家族が権利を保障されるよう、引き続き尽力していく所存である。

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