ヒロシマ・ナガサキで平和を祈念する日を迎えるにあたっての会長談話
2024年08月06日
東京弁護士会 会長 上田 智司
今から79年前の夏、1945年8月6日と9日に、原子爆弾が広島と長崎に投下されました。被爆者と遺族の甚大な苦しみと悲しみは今も続き、終わりが見えません。両地域では、それぞれの原爆投下日を平和記念日、県民祈りの日とし、今年も平和を祈念する式典が行われます。
アメリカなどにおいては、これら原子爆弾の投下が先の大戦の終結を早めたなどとの評価がなされ、また、核兵器の脅威により戦争が抑止されるという「核抑止論」が今でも主張されています。日本もアメリカの「核の傘」の下にありますが、この「核抑止論」が誤りであることは、核保有国が増加し、紛争が頻発する世界の現状が証明しているといえます。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻においても、2023年10月よりイスラエルとパレスチナ間で勃発した紛争においても、戦争終結の兆候がないまま犠牲者は増え続けています。日本でも「台湾有事」などを意識した南西諸島の基地化を急速に進め、与党政治家が「戦う覚悟」を求めるなどして緊張関係を高めています。さらに、ロシアのプーチン大統領などが核兵器使用の可能性について具体的に言及し、北朝鮮が核兵器による威嚇を繰り返し、中国が核弾頭の保有を大幅に増やすなど核兵器の脅威が高まっています。
これらの状況は、世界が未だ、原子爆弾による「ヒロシマ、ナガサキ」の甚大な被害から学ぼうとしていないことの表れといえます。 核兵器という究極の非人道的な殺りく兵器が存在する以上、戦争のない世界の実現には、まず、核兵器の完全な廃絶から始める必要があるのです。
しかし、日本は、核兵器の開発や使用、威嚇としての使用などを禁ずる核兵器禁止条約に未だに署名していません。同条約は2021年に発効し、署名国は既に93か国に上っています。世界唯一の戦争被爆国であり、徹底した平和主義を基本原理とする憲法を有する日本は、「核なき世界」の実現のために積極的役割を担うべきであり、一刻も早く同条約に署名、批准を行い加盟すべきです。
当会は、本日、憲法の定める平和主義の実現のために同条約への加盟を改めて政府に強く求めると共に、その基本的価値である個人の尊厳と基本的人権の尊重及び国民主権が最大限尊重される社会の実現を目指し、歩み続ける決意を新たにします。
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