東京弁護士会

少年事件の適正な報道等を求める会長声明

2005年06月29日

東京弁護士会 会長 柳瀬 康治

 2005年6月22日,板橋区で両親を殺害した疑いで15歳の少年が逮捕され,現在,警察署の代用監獄に勾留されて取調べを受けている。同事件は,年少少年による両親殺害の疑いが掛けられた事案であるがゆえに,社会の関心事となった。
そのため,週刊誌等一部マス・メディアにより,目隠しがされているとはいえ少年の顔写真や実名を推知することが可能な情報が掲載されている。また,インターネット上で,少年の実名や実名を推知することが可能な情報が書き込まれている。
しかし,少年法61条は,家庭裁判所の審判に付された少年について,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならないと規定している。同条は,同法1条の定める少年の健全育成・成長発達権保障の理念から,少年が社会復帰して再出発することを妨げないよう推知報道を禁止するものであり,捜査段階における少年事件の報道についても同条の適用はあると解されている。
また,子どもの権利条約16条は,いかなる児童も私生活,家族等に対して恣意的に若しくは不法に干渉され,又は名誉を不法に攻撃されてはならず,不法な干渉や攻撃から保護を受ける権利があると規定するとともに,同40条2項は,刑罰法規に触れたと申し立てられ,訴追され又は認定されたすべての児童について,手続のすべての段階においてプライバシーを尊重すべきものと規定している。
本件においても,少年法の理念に沿って社会全体が事件を冷静に受け止める必要があり,今後の捜査,弁護人・付添人の活動,家庭裁判所における調査及び審判が適切に行われる必要がある。当会も,少年が逮捕されたとの新聞報道を受けて,直ちに当番弁護士の派遣を行い,少年の権利保障のための手当てをした。
従って,報道機関においては,少年法61条を遵守するとともに,少年法の理念に則って,良識ある取材・報道をなされるよう強く要望する。
また,我々市民一人一人が少年法の理念を十分理解の上,少年の社会復帰を妨げることになりかねないインターネット上での少年の実名・顔写真等の掲載や,少年を特定させるおそれのある書き込み,憶測による発言をすることなく,良識ある対応をすることが求められている。この機会に,市民の皆さんにも,少年事件の特性について理解を深めていただくとともに,少年の更生・社会復帰に力を貸していただくことを呼び掛けるものである。

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