アクセス
JP EN

少年事件と報道のありかたについて

1997年07月04日

東京弁護士会 会長 堀野 紀

 6月28日、14歳の少年が、神戸市須磨区で発生した小学生殺人事件の被疑者として逮捕され、現在取調中である。
この事件は、被害者及び被疑者が双方とも子どもということとその犯行態様の残虐性から社会が重大な関心を持ち、報道も過熱気味であるところ、株式会社新潮社はこうした社会の一部過熱された関心に乗じ、7月2日発売の写真週刊誌「フォーカス」上に被疑者の少年の写真を掲載し、また7月3日発売の「週刊新潮」にも眼を隠した少年の写真を掲載した。
同社の行為とその後の編集責任者の弁明は、少年の健全育成を目的とする少年法の基本理念並びに少年の可塑性を信頼し社会復帰のために少年のプライバシーを保護した少年法61条の趣旨に反し、また手続の全ての段階におけるプライバシーの十分な尊重を保障した子どもの権利条約第40条2項(b)VIIにも反するものである。
さらに、他の一部報道機関においても、成人と同様に無罪の推定を受ける少年に対し、逮捕され捜査の対象となったことによって即犯人であるかの如き断定的な報道と不当にプライバシーを暴く報道がなされている。少年は一般に被暗示性が強く、捜査官に容易に迎合する等の少年期特有の傾向に鑑みるとき、報道に際しては大人の場合に増して十分な配慮が求められるところである。
当会は、株式会社新潮社がなした写真掲載等について強く抗議し同社が深く反省することを求めると共に、他の報道機関においても報道と人権との調和に常に留意し、いやしくも少年及び関係者の人権を一方的に侵害する報道をすることがないように、強く要望する。