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(20)「おひとりさま」の終活 ─「周囲に迷惑をかけたくない」を実現するために─

1 増える「おひとりさま」と、終活の現実

配偶者に先立たれた方、生涯独身を選ばれた方、お子さんのいないご夫婦──いわゆる「おひとりさま」と呼ばれる方が、日本社会で急速に増えています。内閣府の推計によれば、65歳以上の一人暮らしの方は2040年頃には約900万人規模に達するともいわれており、決して一部の方だけの問題ではありません。

「自分が亡くなったとき、誰かに迷惑をかけてしまわないか」「判断力が衰えたとき、誰も手助けしてくれないのでは」──そうした不安を感じていらっしゃる方も多いのではないかと思います。こうした不安は、適切な準備を整えておくことで、かなりの程度、解消することができます。

2 意外と知られていない「おひとりさまの相続」と「放置するリスク」

まず、亡くなった後にご自身の財産がどうなるかを確認しておきましょう。

配偶者にも先立たれ、お子さんもいない場合、法律上の相続人は兄弟姉妹、あるいはすでに亡くなっていれば甥や姪となります。こうした場合、長年疎遠だった親族に突然「相続の手続きをしてほしい」という連絡が届く事態が生じます。連絡を受けた側は、見ず知らずの叔父・叔母の遺産や不動産にどう対応すべきか判断を迫られ、相続するか相続放棄をするかを含め、思わぬ手間を負うことになりがちです。

一方、兄弟姉妹も甥姪もすでになく、戸籍上の相続人が誰もいない場合は「相続人不存在」となります。このとき、亡くなった方に貸金や家賃などの債権を持つ方がいれば、その方(利害関係人)が家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てて清算を行うことになりますが、この申立てには数十万円から100万円程度の予納金が必要になることもあります。そして、こうした手続きを経てもなお残った財産は、最終的にすべて国庫に帰属します。最高裁判所の司法統計によれば、2024年度(令和6年度)には相続人のいない遺産の国庫帰属額が約1,292億円と過去最多を記録しました。

ここで考えていただきたいのは、その財産は本来、ご自身の意思で活かすことができたはずだということです。長年連れ添った大切な方、親身に支えてくれた友人や知人、あるいは応援したい団体や活動──遺言書を残しておけば、財産をそうした「自分が望む形」で届けることができます。何も準備をしなければ、その機会は失われ、財産はご自身と縁のない形で処理されてしまうのです。

3 おひとりさまが備えておきたい三つの法的手段

では、ご自身の意思を実現し、周囲に余計な負担をかけないために、具体的に何ができるのでしょうか。次の三つの法的手段を組み合わせておくことが有効です。

一つ目は任意後見契約です。判断能力が十分なうちに、将来認知症等で判断能力が低下した際の財産管理や生活の支援を、信頼できる人(弁護士等の専門家を含む)にあらかじめ委任しておく契約です。認知症を発症してからでは間に合いませんので、元気なうちに備えることが重要です(当コラム第4回・第12回・第17回もご参照ください)。

二つ目は死後事務委任契約です。亡くなった後の葬儀・火葬・遺品整理・各種手続きなどを、特定の方に委任しておく契約です(当コラム第2回もご参照ください)。ご家族がいない場合、これらを誰が行うのかが決まっていないと周囲に大きな負担がかかりますが、この契約を結んでおけば、ご自身の意思に沿った形で手続きを進めてもらうことができます。

三つ目は遺言書です(当コラム第3回・第10回もご参照ください)。「財産を誰に残したいか」「お世話になった方や団体への感謝を形にしたい」という思いを、法律上有効な形で残すことができます。遺言書がなければ、財産は法定相続人に分配されるか、相続人がいなければ国庫に帰属してしまいます。信頼する方や社会への貢献(寄付・遺贈)という形で財産を活かすことも、遺言書があって初めて可能となります。

この三つ──任意後見契約・死後事務委任契約・遺言書──を組み合わせることで、生前の支援から死後の手続きまでを切れ目なくカバーすることができます。

4 早めに、弁護士にご相談を

今回ご紹介した三つの法的手段の作成や組み合わせ方については、法律の専門家である弁護士がしっかりとサポートいたします。

「どれが自分に必要かわからない」「まず何から始めればよいか見当もつかない」という方も、すべてを一人で抱え込む必要はありません。「今はまだ元気だから大丈夫」と感じていらっしゃる方こそ、準備を始めるいちばんよいタイミングです。

ご自身のこれからの人生を安心して、そして心豊かに楽しむためにも、ぜひお気軽に弁護士へご相談ください。

                                        (根本 達矢)

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