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東京地裁・簡裁へ提出 -即決和解に関する要望書

【東弁新聞 1999/01/20 日付 00285 号 01面 B】

東弁常議員会は、12月7日、即決和解の運用に関する東京地方裁判所、東京簡易裁判所宛「要望書」を採択し、同月15日、東京地方裁判所長及び東京簡易裁判所事務掌理者に対し提出した。

東弁会員が代理人として関与した即決和解事件の担当裁判官の対応に問題があったとして、申立があり、法廷委員会で調査の上、今回の採択に至った。
担当裁判官は、即決和解の申立代理人起案の和解条項原稿につき、その変更を強く求め、会員はこれを甘受せざるを得ず修正案を提出した。ところが、同裁判官は再度会員に対し、第一回の和解期日において、当事者間の合意によって定まっている条項の多数(更新料の削除や契約解除事由の削除など)について執拗に再度の訂正を要求し、「和解も裁判の一種なので、当事者が内諾している条項を裁判官が認めなくても当然である」旨発言した。
このような同裁判官の要求は、明らかに当事者間の自由な合意により形成されるべき即決和解の条項に過剰に介入したものであった。

さらに、同裁判官は、同和解期日において、
第一に、和解事件相手方2人に対し、会員作成の和解条項第一次原案と和解条項改訂版とを抽象的に比較しながら、「裁判所はこんなに手をいれた」と述べ、さも「裁判所は事前に十分に検討した、会員の起案はなっていない」と受けとめられる発言をした。
第二に、相手方本人及び会員側関係者が在廷する席上で、会員に対し、「給付条項と確認条項の違いは和解のイロハのイである」「起訴前の和解をもっと勉強して下さい」等と極めて強い口調の叱責をした。

第一回の期日には、職権的に訂正要求を押し通そうとする裁判官と当日即決和解を成立させることが依頼者の希望であるため、これを受容せざるを得ない会員との対照的な姿勢の下で、裁判官によって会員の名誉感情と信用を著しく損なう言動が重ねられた。特に、会員の弁護士としての信用にも影響を及ぼしかねない言動を意図的に採った形跡がある。

以上のような申立てを踏まえ、前記裁判官の即決和解手続きにおける言動等には、極めて不適切なものがあることが明らかであったので、今回、常議員会で採択され、「今後同様の問題が再発しないようしかるべき措置を執られるよう要望する」旨の申し入れをなしたものである。
なお、常議員会では当該裁判官が他にも即決和解に関して、不当な訴訟指揮を繰り返しているとの事例報告が相次いでなされた。

本件は、日々の弁護士としての業務の中で常に惹起している可能性の高い事案である。これ以外にも、東弁新聞第278号でも報告したように最近民事裁判における裁判官の不当な訴訟指揮の事例が多数報告されている。
法廷委員会としては、会員の泣き寝入りを無くすため、更に多くの事例の収集を進め事態の改善に取り組む予定であり、会員の積極的な事例報告を要望している。