東京弁護士会

死刑の執行停止についての要請

2006(平成18)年7月3日

東京弁護士会
会 長 吉岡 桂輔
第1 要請の趣旨
 法務大臣は、現在の死刑確定者のいずれに対しても、死刑の執行命令を下さず、死刑の執行を行わないよう要請する。
第2 要請の理由
1 我が国は、1980年代後半から90年代にかけて、免田、財田川、松山、島田の死刑確定4事件について再審無罪判決が言い渡され、死刑判決がなされた事案についても誤判が存したことが明らかになっている。
また、昨年4月には、名張毒ぶどう酒事件の再審開始決定(検察官による異議申立による異議審継続中)もなされている。

2 国際的にも、1989年に国連で国際人権(自由権)規約第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)が採択されて以来、多くの国で死刑が廃止されている。
EUの地域的拡大につれて、ロシアや旧東欧諸国さらにイスラム圏にも数えられるトルコなどが死刑制度の廃止を決め、あるいは死刑執行を停止している。
また、アジアにおいても、フィリピンのアロヨ大統領は、本年6月24日、死刑廃止法に署名して、1994年に復活していた死刑の廃止を実行した。同国はカトリックの宗教人口も多く、教会の死刑反対の姿勢が影響したとコメントされている。我が国と比べて、国内に国際テロ組織を抱え、政情も、治安も不安定な状況が認められるが、それでも死刑を廃止したのである。
韓国、台湾など他のアジア諸国においても、死刑制度の廃止や執行の停止が検討されている。
このように、死刑廃止や執行停止が国際的な潮流となっていることは明らかである。

3 我が国は、国連人権委員会などの死刑廃止へ向けての度重なる勧告もなされているが、他方で、1995年地下鉄サリン事件の発生以来、政府の世論調査では死刑存置論が多数を占めていると報道されている。しかしながら、死刑制度に関する情報開示は不十分であるし、世論調査の方法についても問題があるという指摘がなされている

4 我が国は、死刑制度をめぐる国際的な状況を直視するとともに、死刑制度のあり方や確定者の処遇に関する情報公開も視野に入れて、死刑制度の持つ問題点を直截に議論すべき時期に来ている。
2009年の裁判員制度の実施を直前にして、死刑に直面する被疑者・被告人について、あるべき弁護のあり方や弁護体制については、弁護士や弁護士会に限らず、裁判所・検察・警察を巻き込んで議論する必要がある。

5 これまで死刑の執行は、国会閉会直後や閣僚の交代時期など、国民の関心が他に向けられやすい日程で行われてきた。
しかしながら、上記のような情勢にある現在、法務大臣としては、漫然と死刑確定者の死刑執行を進めるべきではなく、思いとどまるべきである。
その上で、死刑制度における前記の問題点について、各界や各層を含めた忌憚ない議論を行わなければならない。
当会は、こうした認識のもとに、法務大臣に対し、死刑確定者に対する死刑執行の手続をなされないように要請するものである 。
以上
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