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全面的国選付添人制度の実現を求める決議

少年事件の弁護士付添人は、少年に必要な法的・社会的援助を総合的に行うことができる存在として、家庭裁判所の少年審判手続での事実認定や保護処分が適切に行われるようにする活動をし、また家庭・学校・職場などの環境調整及び被害者への対応などを行っている。

日本弁護士連合会は弁護士付添人の重要性を自覚し、全会員の特別会費による少年保護事件付添援助制度を設け、当会は少年鑑別所に収容された少年に対し、少年や保護者からの要請を受けて弁護士を派遣し、無料で少年との面会を行う少年当番弁護士制度を実施している。

子どもの権利条約第37条(d)は「自由を奪われたすべての児童は、…弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有」すると規定している。

また、国際連合子どもの権利委員会(CRC)による、日本政府の報告書に対する第3回最終見解(2010年)も、すべての子どもが手続のあらゆる段階で法的及びその他の支援を受けられることを確保すること(パラグラフ80(d))を求めているところである。

したがって、確立した国際準則に照らしても、弁護士付添人により適正手続を保障し、更生を支援するという法的援助を行う制度を設置することは、本来は国の責務である。

被疑者国選弁護制度の対象事件が2009年5月から必要的弁護事件に拡大された。しかし、少年事件の国選付添制度は一定の重大事件などに限定され、かつ、家庭裁判所の裁量的選任である。このため、被疑者段階では弁護士の援助を受けられた少年の大多数が、自ら費用を負担して付添人を選任しない限り弁護士による援助が受けられない事態に至っている。

2009年の全国統計によれば、家庭裁判所で終局処分を受けた少年54、254人のうち、弁護士付添人が選任された少年は6,139人・約11%にとどまっている。少年鑑別所に送致された少年に限っても、総数11、241人のうち、弁護士付添人が選任された少年は5,562人・約49.5%であり、このうち国選付添人が選任された少年はわずか516人・少年鑑別所に送致された少年全体の約4.6%にすぎない。このように、少年に対する法的援助の実情は極めて不十分である。

とりわけ少年鑑別所での身体拘束を受けた少年は、事件の軽重を問わず、成育歴や家庭環境に問題を抱えていることが多く、また、少年院送致等の重大な処分を受ける可能性が高いことからすれば、国費による弁護士付添人の援助の体制を早急に整える必要がある。

当会は、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所での身体拘束を受けたすべての少年の事件に拡大することを強く求めるものである。

2011(平成23)年5月31日

東京弁護士会