東京弁護士会

「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案」に対するパブリックコメント

「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案」に対する意見

2012(平成24)年9月4日
東京弁護士会 会長 斎藤 義房

今般消費者庁より「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案」(以下「本制度案」という。)が公表され意見募集がされているので、公表されている訴訟制度(以下「本制度」という。)について、当会は以下のとおり意見を述べる。
なお、本制度に関しては昨年12月に骨子が示され、当会はそれに対して本年1月23日付けで意見を述べているところであり、本意見も基本的にはそれと変わるものではないが、本制度案では対象事案が骨子段階よりも更に狭められており、他方で、骨子では触れられていなかった制度が具体化されており、なおよりよい制度にするために検討すべき事項が多いので意見を述べる次第である。 

1 早期立法の必要性

いわゆる集団的消費者被害は、近時ますます複雑化・多様化し、このような被害の回復を実効的に図るための制度の創設が急務となっている。本制度に関しては消費者庁において今通常国会での立法化を表明し、当会も前回の意見書において今通常国会での立法化を強く求めたところであった。それにもかかわらず、今通常国会において未だ立法化が実現していないことはきわめて遺憾である。
本制度は、これまで訴訟による被害回復が困難であった消費者にとって有益な制度であり、またわが国の法制度上も画期的なものであるので、当会としては同制度の立法化を今度こそ実現するよう強く求めるものである。

2 立法化に際して留意・検討されるべき諸点

前記のとおり、本制度の早期実現こそがもっとも重大かつ喫緊な要請であるが、なお本制度を実効性あるものとするため、下記の諸点については、立法化に際して特段の留意・検討をすべきである。

(1) 共通義務確認の訴えについて(本制度案の第2の1(1))
① 対象となる請求権
本制度案は、共通義務確認の訴えの対象となる事案を「消費者契約に関する」請求に係るものに限定しているが、そのような限定によれば、消費者と事業者との間に契約関係がない場合も考えられる個人情報流出事案、有価証券報告書の虚偽記載等に係る事案、虚偽又は誇大な広告・表示に関する事案等が本制度の対象外となるおそれが高い。
しかしながら、これらの事案も、個々の消費者が自ら訴えを提起して被害回復を図ることが困難な類型であり、本制度の対象とする必要性が高いことは、消費者と事業者との間に契約関係がある事案と全く同様である。
したがって、「消費者契約に関する」との限定は不要である。
また、不法行為に基づく損害賠償の請求について、民法の規定によるものに限定する合理的な根拠はなく、金融商品取引法等の特別法に基づく責任も含めるべきである。

② 損害の内容
本制度案は、損害賠償請求についての損害を、消費者契約の目的となるものについて生じた損害又は消費者契約の目的となるものの対価に関する損害に限定しているが、そのような限定により、いわゆる拡大損害はもちろん、精神的損害(慰謝料)が除外され、かかる側面からも、個人情報流出事案等の重要類型が本制度の対象外となってしまう。
損害の内容についてのこのような限定も、過度に対象事案を狭めるものであって妥当でない。

③ 被告の範囲
本制度案は、本制度の被告の範囲につき、契約の相手方事業者、又は不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求に係る訴えの場合のみ、これに加えて、契約の履行をする事業者又は消費者契約の締結について勧誘をし、当該勧誘をさせ若しくは当該勧誘を助長する事業者としている。
一般に消費者被害においては、実効的な被害回復等の観点から、より多数の者を被告とする要請が強く、本制度案が、被告の範囲を、勧誘を助長する事業者等にまで拡げたことは評価できる。
しかしながら、とりわけいわゆる悪質事業者については、事業者である法人には資力がなく、その事業活動を支配している者に資金が流出している等の実態が存することが極めて多いため、このような者を被告とする必要性が高いところ、本制度案のような被告の捉え方では、このような者は本制度の被告にできないおそれがある。
そこで、被告の範囲は、「事業者」に加えて、上記のような事業活動の実質的な支配者を含めるような規律とすべきである。

④ 訴訟要件
本制度案は、「簡易確定手続において届出債権の存否及びその内容を適切かつ迅速に判断することが困難と認められるとき」は訴えを却下することができるとしているが、なお要件として抽象的であり、裁判所の広範な裁量を認める余地のある文言である。
二段階目の簡易確定手続において、ある程度個別争点が存したとしても、共通義務が確認されることにより消費者が受ける便益や、複数訴訟を避けられることによる訴訟経済的観点をも考慮して、より明確かつ限定的な要件が検討されるべきである。

(2) 共通義務確認訴訟における和解について(本制度案の第2の1(8))
本制度案は、特定適格消費者団体が、個々の消費者から授権を受けずに、共通義務の存否について訴訟上の和解をすることができるものとし、これを二段階目の簡易確定手続の開始原因としているが、かかる制度は、より多数の消費者の被害回復に資する可能性があり、評価できる。

(3) 申立団体による通知及び公告等について(本制度案の第2の2(3))
本制度案は、簡易確定手続における通知・公告費用について、申立団体である特定適格消費者団体がこれを負担するものとしているが、共通義務確認訴訟の判決によって被告たる相手方事業者の責任が認められており、他方で、本制度の担い手である適格消費者団体の財政的基礎は必ずしも盤石とはいえないのが現状であるから、通知・公告費用については、被告に負担させるのが公平である。

(4) 特定適格消費者団体のする仮差押えについて(本制度案の第2の3(1))
いかにより多数の消費者が利用し得る訴訟制度を創設したとしても、被告となる事業者の財産が散逸等するおそれを防止し得なければ、真の意味での実効的な消費者被害の回復は図れない。
そのような観点から、本制度案が示す仮差押えの制度は評価できる。
ただし、特定適格消費者団体が対象債権の総額等を疎明するのは困難な場合もあると思われることから、このような負担を軽減し、実効性のある制度とするための所要の措置が必要である。

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