東京弁護士会

インタビュー:大谷恭子会員に聞く「共生(インクルーシブ)教育を求めて」

聞き手・構成:高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員
大瀧 靖峰(61期)
藤岡 毅(47期)

元内閣府障がい者制度改革推進会議構成員,
元内閣府障害者政策委員会
委員 大谷 恭子会員(30期)

大谷会員の著書
『共生社会へのリーガルベース
―差別とたたかう現場から』
(現代書館・2014年)

1 障害者の教育分野に取り組むきっかけ

──障害者の権利擁護の中でも教育分野に特に力を入れるようになったきっかけを教えて下さい。
 もともと刑事弁護をやりたくて弁護士になりました。弁護士2年目のとき,小学校の校門を乗り越えて逮捕された人の接見依頼が来ました。当時養護学校2年生だったK君が,地域の小学校に転校を希望し,これが容れられずK君は校門の前で毎日勉強していたのです。ある日,校内のトイレを借りようと,K君にその日勉強を教えてくれていた支援者が校門を乗り越え,建造物侵入罪で逮捕され,起訴されました。支援者は公務員で,有罪になったら失職します。そこで,私は,K君に小学校の学籍さえあれば建造物侵入罪は成立しない,K君の転校を認めない学校指定処分は違法であると主張し,刑事事件でしたが,障害のある子の地域の学校の学籍を求める刑事行政裁判となりました(注:東京高判昭和57年1月28日判例タイムズ474号242頁)。

2 分離教育の問題点

──どうして障害のある子と障害のない子が一緒に学ぶことが大切なのでしょうか。
 できるだけ小さな時からごく普通に障害のある人と出会うことによって,当たり前の人間関係ができます。障害のある子を地域の学校から排除して,いくら人に優しくと言っても,日常的に関わり合う仲間にはなれません。今では,共生社会の必要性は普通に言われるようになりましたが,これは分けない教育によってしか,実現できないと思います。

3 若手弁護士へのメッセージ

──まだ障害者の権利擁護に取り組んだことのない若手弁護士に一言お願いします。
 私も,K君と出会うまでは,身近に障害のある子と出会ったことがありませんでした。でもK君が地域の学校から排除されていることを知り,根深い差別があると気づかされました。事件と出会い,自分を変えられたのです。障害者差別解消法が成立し,障害者の権利や自由を実現するために合理的配慮を提供することは社会の義務だとされました。合理的配慮は,周りを調整・変更することです。弁護士は調整のプロなのですから,どんどん現場交渉をして障害者の利益を実現して下さい。これによって,学校,クラス,地域も,自分も変えられます。是非,積極的に,障害者の教育分野に関わって下さい。

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