四 障害のある人との対応に関するQ&A 入門編
障害のある方の対応のために、日頃から法律事務所に準備しておいた方が良いものはありますか。
それぞれの弁護士が「障害」に対する知識をもち、理解することが必要です。まずは、法令の内容と障害の特性を理解し、障害者への対応は、個別具体的なものであることを理解しましょう。
「障害」の概念について、社会モデルで考えることを理解することも重要です。
どのような対応が「不当な差別的取扱い」になりますか。
正当な理由なく、障害を理由としてサービスの提供を断ったり、場所や時間等を制限したり、不当な条件を加えたりすることです。
具体的には、介助者がいれば相談に来られる人からの相談を、障害を理由として断ったり、障害者から相談を受ける際に不当に条件を加えたりすることは、不当な差別的取扱いになります。
合理的配慮の提供を求められた際の留意点はどのようなものがありますか。
「前例がないのでできません」×
これはアウトです。
「特別扱いできません」×
これもアウトです。
合理的配慮は「特別扱い」ではありません。
「もし何かあったら...」×
これもアウトです。
漠然としたリスクで断ることは禁止されています。
「前例がない」「特別扱いはできない」等といって合理的配慮の提供を断ることはできません。
同じ障害でも特性は様々ですので、一括りに捉えないことが大切で、その方の具体的なニーズを聞き取って配慮する必要があります。
法律事務所として合理的配慮が難しい場合、どう対応したら良いでしょうか。
合理的配慮は、その実施に伴う負担が過重である時は提供義務を免れますが、過重な負担がない限り対応しなければなりません。過重な負担になるか否かは、事務所の規模や業務への影響、実現可能性の程度、費用負担の程度等を総合的に考慮して判断することになります。事務所の規模によっては、費用負担等の都合上、合理的配慮が困難なこともあるでしょう。仮に過重な負担になると考えられる場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努める必要があります。その上で、合理的配慮を一切断るのではなく、代替手段を検討するなどの対応が求められます。
建設的対話の具体例としてどのようなものがありますか。
本人が希望する配慮の提供は難しくても、代替策を提示することが重要です。
例えば、事務所の相談スペースに車いすの方が入れない場合でも、それだけで相談を断らずに、相談場所を変更するなどの対応が考えられます。具体的には、弁護士会館の面談室や事務所近くの喫茶店、貸会議室を利用するなどです。また、手話通訳者が相談に必要な方で手話通訳者の手配が難しい場合、居住自治体へ意思疎通支援者を派遣申請し同行してもらえないかお願いしてみることが考えられます。電子機器を用意することが難しい場合には、相談者に機器を持参してもらい、電源を確保しておくと良いでしょう。