東京弁護士会

少年事件の実名等の報道に抗議し、少年法61条の遵守を求める声明

2013年03月12日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

本年2月28日、東京都武蔵野市で女性が金銭を奪われ刺殺された事件に関し、2名の少年が逮捕され、現在取調べ中である。
株式会社新潮社は、3月7日発売した週刊新潮において、取調べを受けている2名の少年について、実名のみならず顔写真をも掲載し、さらに家族環境や従前の通学先等を詳細に報じる記事を掲載した。
このような同社の出版報道は、少年時の犯行について氏名、年齢、職業、住所、容貌等により本人と推知することができるような記事又は写真の報道を禁止した少年法61条に反し許されない。少年事件の背景には複雑な要因が存在し、少年個人のみの責任に帰する厳罰主義は妥当ではなく、未成熟な少年の成長発達支援が保障されるべきである。そのために少年法1条は、健全育成の理念を掲げ、同法61条は、この理念に基づき、少年の更生・社会復帰を阻害することになる実名報道を事件の重大性等に関わりなく一律に禁止している。
また、国際人権法においても、子どもの権利条約40条1項は子どもの社会復帰の権利を保障し、同2項(b)ⅶは手続の全ての段階におけるプライバシーの十分な尊重を保障している。少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)8条も、少年のプライバシーの権利はあらゆる段階で尊重されなければならず、原則として少年の特定に結び付き得るいかなる情報も公表してはならないとしている。
今回の実名報道、写真掲載等は、これら国際人権法のルールにも明らかに抵触している。
もとより、憲法21条が保障する表現の自由は重要であるが、少年の実名・顔写真が報道に不可欠な要素とはいえない。少年事件の背景・要因を報道することこそ、同種事件の再発を防止するために不可欠なことである。
そもそも、同社の報道は、無罪の推定を受ける逮捕段階の被疑者について、犯人として断定的な報道を行っており、その点からも許されない。 

株式会社新潮社は、1997年7月にも、同年6月神戸市須磨区で発生した小学生殺人事件の14歳の被疑者の少年について写真掲載報道を行っており、これに対して当会は、少年法の理念及び少年の人権保障の観点から、今回と同様の抗議声明を出し、少年法61条を遵守するよう要請した。しかし、同社は、2005年及び2006年にも少年事件に関して実名・写真掲載報道を行い、日本弁護士連合会が会長談話において同社に抗議した。それにも関わらず、今回また、このような事態が繰り返されたことは極めて遺憾である。
当会は、今回、同社がなした実名等掲載報道について、少年法61条に反し少年の人権を著しく侵害するものとして強く抗議するとともに、今後同社がこのような少年の人権を侵害する実名報道、写真掲載等を繰り返さないことを求める。
また他の報道機関においても、少年法61条を遵守し、少年及び関係者の人権保障に留意して報道されるよう要望する。

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