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抜本的な難病者支援制度の構築を求める会長声明

2013年11月18日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 2011年成立の改正障害者基本法により、従来の法制度において障害者に含められておらず支援が乏しかった難病者についても障害者とされることになり、現在、わが国の障害者制度改革において、難病者に対する制度の谷間のない支援の一日も早い実現が強く求められている。
 2013年10月29日、厚生労働省科学審議会疾病対策部会難病対策委員会において、難病医療費助成の仕組みを大きく変更する「難病対策の改革に向けた取り組みについて(素案)」(以下、「改革案」)が発表された。厚生労働省は来年の通常国会に上記改革案を前提とした難病医療費助成についての法案を提出する予定である。
 しかしながら、改革案は、医療費助成対象の指定疾患を増やす反面、軽症難病者を原則として支援の対象から除外してその対象を限定するとともに、これまで無償措置がとられていた一定の重症難病者を含めた助成対象者に対して負担能力を超えた過大な医療費負担を求める内容となっている。
 助成の対象から外された軽症難病者には、重症化せずに日常生活を維持するために必要とされる適切な医療を受けるための医療費助成が欠かせない。また、重症難病者には、「応能」と称して世帯の可処分所得の1割以上を負担させるものとなっており(患者団体の試算による)、さらに介護費用等を考慮すればその負担はあまりにも厳しい。
 このように従来の支援を大幅に削り障害ゆえの特別な負担を強いることとなる改革案は、生存権を保障するべき憲法の趣旨、難病者に分け隔てない基本的人権を保障する改正障害者基本法の趣旨に反するものであって、実質的に制度の谷間を解消するものとはいえず、到底容認できない。
 政府は、法案提出にあたって、今国会で批准承認予定の障害者権利条約の趣旨に従い、難病当事者の意見を真摯に受けとめ、真に制度の谷間のない支援を実現するために抜本的な難病者支援制度の構築をすべきである。