東京弁護士会

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」に対する会長コメント

2016年04月28日

東京弁護士会 会長 小林 元治

1 本コメントの趣旨
 自民党及び公明党は、いわゆるヘイトスピーチに関して、本年4月8日、参議院に 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」(以下「本法案」という。)を提出し、参議院法務委員会で審議が続いている。
 本会は、本法案中のいわゆる「適法居住要件」の削除を強く求める。

2 本コメントの理由
(1)本会は、与野党がヘイトスピーチ等の人種差別問題を重要な課題として認識し、その対策のための法案が国会に提出されたことについては、これを評価するものである。
(2)しかし、本法案に関しては様々な議論がなされているが、とりわけ、対象となる「不当な差別的言動」を「適法に居住する者に対する」言動に限定していること(第2条)(いわゆる「適法居住要件」)は、人権保障の観点からおよそ許容されてはならず、その削除を求めるものである。
 もとより差別は誰に対しても許されないものであり、在留資格の有無を考慮する余地はない。在留資格を有しない人に対してであれば、人種や民族を理由としたヘイトスピーチも許されるなどということはおよそあり得ないものである。適法居住要件を定めることにより、在留資格を有しない人や難民申請者らに対するヘイトスピーチは許されるとの誤った受け止め方をされ、これらの人々に対するヘイトスピーチを助長するおそれが高い。
 また、かような限定は、人種差別撤廃条約の解釈基準として人種差別撤廃委員会が発表した「市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30」において、「人種差別に対する立法上の保障が、出入国管理法令上の地位にかかわりなく市民でない者に適用されることを確保すること、および立法の実施が市民でない者に差別的な効果をもつことがないよう確保すること」(パラグラフ7)と勧告されていることに真っ向から反するものである。
 さらに、この要件があると、枕詞として「不法滞在」「犯罪」をつければこれまで通りのヘイトスピーチを行うことができるといった抜け道を法律自体が提供することとなってしまい、ヘイトスピーチの解消という法の目的を果たすことができない。
 以上の理由から、適法居住要件の削除を求めるものである。

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