地方消費者行政に対する国の財政的支援の継続を求める会長声明
2017年08月02日
東京弁護士会 会長 渕上 玲子
2017年7月25日、消費者庁は、「地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の支援のあり方等に関する検討会」の報告書を公表した。
これは、地方消費者行政推進交付金等(以下、「交付金等」という。)による支援が平成29年度に1つの区切りを迎えることから、平成30年度以降の地方消費者行政の充実強化に向けた今後の支援の在り方等について、基本的な方向性について考え方をまとめたものである。
報告書では、高齢化、情報化、国際化の進展等による新たな消費者問題や国の重要課題について、それらの課題に取り組む地方自治体に対して国が支援を行うとしつつも、これまで交付金等により整備した体制を維持しさらなる地方消費者行政の充実を目指すために、地方の財源の確保を促す必要があるとしている。
消費者庁が設立された平成21年と平成28年とを比較すると、交付金等により地方消費者行政は充実してきている。例えば、消費者相談の窓口を設置していない市区町村が22.4パーセントあったものがゼロとなり、消費生活センターは501か所から799か所となった。また、消費生活相談員は2800人から3393人に増員されている。
しかしながら報告書も指摘するとおり、地方交付税措置よりも地方自治体の自主財源は少ない。交付金等は、交付金等を呼び水にして自主財源を充実することがねらいであったが、地方自治体の一般財源が限られており、充実するのが困難であったというのがこれまでの経緯である。今後、地方自治体の自主性に任せて地方消費者行政の財源が充実するというものではない。これでは、せっかく整備された体制が縮小するおそれがある。
また、紛争解決のためのあっせんの実施、商品テストの実施、資格のある相談員の配置、相談件数に見合った相談員の配置、相談員の待遇の向上等に関して、引き続き地方消費者行政を充実する必要がある。
さらに、地方自治体が担っている消費者行政のなかには、相談情報を国に集約するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の入力作業や違法業者に対する行政処分等、国全体の利益のために行っているものも少なからず存在する。
そこで、交付金等によりそれまでに整備した体制の維持、地域格差の是正及び国の事務の性質を有すると考え得る事項への対応のため、国が、使途を消費者行政に限定した地方自治体に対する実効的かつ継続的な財政支援を行うべきである。
当会は、平成23年7月19日に「地方消費者行政に対する国の実効的支援を求める意見書」を発表しているが、「地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の支援のあり方等に関する検討会」報告書の公表を受けて、改めて、地方消費者行政に対する国の財政的支援を求める。
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