東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から7年を迎えるにあたっての声明
2018年03月09日
関東弁護士会連合会 理事長 高 木 光 春
東京弁護士会 会 長 渕 上 玲 子
第一東京弁護士会 会 長 澤 野 正 明
第二東京弁護士会 会 長 伊 東 卓
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故から、丸7年を迎えることとなる。
関東弁護士会連合会並びに東京弁護士会、第一東京弁護士会及び第二東京弁護士会(以下「東京三弁護士会」という。)は、東日本大震災発生直後から、関東弁護士会連合会では東日本大震災災害対策本部、東京三弁護士会では災害復旧復興本部を立ち上げ、電話相談や避難所相談、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の相談、被災地への各種支援等を実施しており、また、原子力損害賠償紛争解決センターには、東京三弁護士会に所属する弁護士が、現場で和解仲介を担う仲介委員・調査官として活動をしており、これらは今年度も同様に継続されている。
復興庁の報告では被災直後に47万人いた避難者は、昨年12月時点では7万7000人に減少したこと、また、民間住宅等用宅地の80%、災害公営住宅の92%が完成したとされており、復興の槌音は確かに感じられる。ただ、ここに至り特に感じることは、東日本大震災の被災、被害事実の風化も加速化していることである。復興が途上であるにもかかわらず被災等の事実が過去のものとなり、また、被害回復、被災者支援の取り組みへの意識が低くなっている風潮には強い懸念を抱く。
すなわち、被災等事実の風化は、被害者及び被災者の切り捨てにつながる。例えば、東北地方沿岸の被災地では、被災世帯を対象とする災害援護資金貸付の償還が本格化しつつあり、また、災害公営住宅の家賃の引き上げも始まっているとのことであるが、それは復興途上の被災者の生活が困窮の危機に陥ることに直結する。
さらに、仙台弁護士会が取り組んだ石巻市等の戸別訪問調査により、在宅被災者等に支援の手が行き届かず、今なお復興途上にも至らない過酷な生活を強いられている実態が明らかとなってきている。
そこで、弁護士の被災者に対する無料相談を資力を問わずに行い、代理援助費用の立替も資力を問わないとする、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(震災特例法)」(2018年3月31日期限)の再延長は不可欠である。日本弁護士連合会及び東北弁護士会連合会もまた今国会での再延長を強く要求しており、この改正案を成立させ、被災者支援をより充実したものにしていかなければならない。
被災者の復興が途上であることは、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島、茨城4県の企業2602社が現時点でも二重ローン問題の相談を希望している、という復興庁が調査・推計した事実からも明らかである。この点、2018年(平成30年)2月1日に東日本大震災事業者再生支援機構法による二重ローン問題の支援期間を2021年(平成33年)3月31日まで延長する法改正を実現したことは、適切な対応であり評価できる。今後も、被災した中小企業のみならず、被災者及び被災事業者の復興支援に万全を期すべきである。
一方、原子力発電所事故の被害者に対する救済・賠償は依然として不十分である。いくつかの集団訴訟で国や東京電力の責任を認める画期的判決が出ているが、残念ながら被害者救済に資する十分な賠償を命じたと言える内容ではない。また、前述の原子力損害賠償紛争解決センターには、設立以来2万3000件を超える申立てが行われ、その7割5分超に和解が成立しているが、しかし被災された住民・事業者の中には、本件事故発生当初の損害についてこれまでに十分な賠償を受けていない方や、本件事故からの時間の経過等を踏まえてもなお損害の発生が継続していると考えられる方もいることが推測される。
「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律(原賠時効特例法)」が2013年(平成25年)12月に施行されたことにより損害賠償請求期間が10年に延長されたが、復興庁等において被害者が賠償を適切に受けられているかにつき調査し、同請求期間の再延長の必要性を検証する等して、あらためて社会全体で原子力発電所事故の被害の重大性を考える機会を持つべきである。
関東弁護士会連合会及び東京三弁護士会は、来年度も災害対策本部、災害復旧復興本部を中心として、被災者・被害者の人権擁護のため、東日本大震災に関する諸問題について、国や関係機関に対する積極的な提言を行うほか、引き続き復興途上の被災者・被害者に寄り添いながら「人間の復興」を実現すべく支援活動により一層力強く取り組むことをあらためて決意し、ここに宣言する。
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