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「イラクにおける人道支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」に関する会長声明

2003年07月26日

東京弁護士会 会長 田中 敏夫

1 本日、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案」(イラク特別措置法案という)が参議院で採択された。

2 日弁連は、7月4日、イラク特別措置法案が衆議院を通過したのを受けて、同法案が他国領土での武力行使を禁じている憲法に違反するおそれが大きく、国民の意見も大きく分かれているにもかかわらず、延長国会におけるわずかな審議のみで与党3党が全野党の反対を押し切ってイラク特別措置法案を採決したことは容認できないとして、採決に抗議し、イラク特別措置法案に反対する会長声明を出した。

3 日弁連の会長声明が指摘したように、そもそも、イラク侵攻は国連憲章に違反する違法なものである。米英がイラク侵攻を正当化するために主張した大量破壊兵器は未発見であるのみならず、米英政府による情報操作疑惑も生まれている。また、米軍の司令官自ら認めているようにイラク全土で現在も戦闘が継続している。また、小泉首相自ら認めているとおり、自衛隊員が攻撃により死傷する危険性も予想される。
そうしたイラクにおいて自衛隊が戦闘継続中の米英軍のために武器・弾薬・兵員を輸送することは、「非戦闘地域での後方支援」などではなく米英軍の武力行使と一体化したものと評価せざるをえない。

4 憲法は、他国での武力行使を認めていないし、国の交戦権も放棄している。したがって、イラクにおいて、自衛隊が占領行政を行っている米英軍を中心とした多国籍軍の指揮のもとで「後方支援」を行うことは、武力行使を否定し、国の交戦権を放棄した憲法に違反するおそれがある。

5 朝日新聞の世論調査によると、イラクへの自衛隊派遣について、賛成は33%に対して反対は55%であると報道されている(7月22日付朝日新聞朝刊)。このように、国民の意見が大きく分かれているにもかかわらず、参議院においてもわずかな審議で与党3党が全野党の反対を押し切ってイラク特別措置法を採決したことは到底容認できない。

6 東京弁護士会は、採決に強く抗議するとともに、今後とも引き続き憲法の定める平和主義、基本的人権擁護のために全力で取り組む決意を表明する。