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改めて少年事件の違法な実名報道に強く抗議し、少年法第61条の遵守を求める会長声明

2023年06月26日

東京弁護士会 会長 松田 純一

株式会社新潮社(以下「同社」という。)は、「週刊新潮」2023年6月29日号において、本年6月14日に岐阜市の陸上自衛隊射撃場で発生した自動小銃による殺傷事件(以下「本事件」という。)に関し、被疑者とされた18歳の少年の実名及び顔写真を掲載した(以下「本件記事」という。)。
少年法は、その第1条において「少年の健全な育成」、すなわち少年の成長発達権の保障の理念を掲げており、同法第61条は、本件記事のような、少年のときに犯した罪について氏名、年齢、職業、住所、容ぼう等、本人と推知することができるような記事又は写真の掲載(いわゆる推知報道)がなされると、少年のプライバシー権や成長発達権を侵害し、ひいては少年の更生と社会復帰を阻害するおそれが強いことから、事件の区別なくこれを一律に禁止している。 
インターネットが普及した昨今の状況を踏まえれば、ひとたび少年の氏名や容ぼうが公表されれば情報が拡散されて回収不能となり、それが少年の更生や社会復帰の妨げとなることは明らかである。
なお、2021年の少年法改正(以下「改正法」という。)により、2022年4月1日より、18歳及び19歳のときに罪を犯した場合の推知報道禁止が一部解除されるに至ったが、あくまでも家庭裁判所が検察官送致決定を行った場合において、検察官が公判請求をした後に限られている(改正法第68条)。本件記事は、逮捕から間もない段階で実名及び顔写真を掲載しているものであって、仮に、本事件が改正法第68条の要件を将来的に充足する可能性があるとしても、本事件は未だ捜査段階にあるため違法であることは明らかであり、到底容認できない。
改正少年法の附帯決議においても、「いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」として、特定少年であっても推知報道が少年の更生と社会復帰を阻害することへの懸念が示されており、全ての報道機関は、今一度、かかる附帯決議を想起すべきである。
同社は、2021年にも少年事件に関する記事の中で実名及び顔写真を掲載しており、当会や日本弁護士連合会はその際も抗議声明を出し、少年法第61条の遵守を求めた。
当会は、株式会社新潮社に対し、同社が少年法に反する違法行為を繰り返し、少年のプライバシー権及び成長発達権を著しく侵害する行為を断行することに改めて抗議し、今後、同社が少年の人権を侵害する報道を二度と繰り返さないことを強く求めるものである。

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