東京弁護士会

改めて、少年事件の実名等の報道に強く抗議し、少年法第61条の遵守を求める会長声明

2021年06月21日

東京弁護士会 会長 矢吹 公敏

株式会社新潮社は、「週刊新潮」2021年6月16日号において、立川市で2名の男女を殺傷したとして殺人や殺人未遂等の罪に問われている事件について、犯行時少年である被疑者の実名及び顔写真を掲載した(以下、本掲載記事という。)。
本掲載記事は、少年のとき犯した罪について氏名、年齢、職業、住所、容ぼう等、本人と推知することができるような記事または写真の掲載(いわゆる推知報道)を禁止した少年法第61条に違反し、許されない。
少年法は、第1条で少年の「健全な育成」、少年の成長発達権の保障の理念を掲げている。推知報道がされると、少年の成長発達権やプライバシー権を侵害し、ひいては少年の更生と社会復帰を阻害するおそれが強いことから、同法第61条は、少年の推知報道を、事件の区別なく一律に禁止している。
本掲載記事は、逮捕から間もなく、処分そのものが課せられるのか、いかなる処分が課せられるのか全く不透明である段階で、実名及び顔写真という、容易に個人を特定しうる情報を掲載しており、当該少年のプライバシーを侵害するものである。少年の氏名や容ぼうが報道されれば、インターネット上に少年の情報が半永久的に残り、少年は就労や日常生活において著しい不利益を受け、更生が阻害されることは明らかである。
令和4年4月1日に「少年法等の一部を改正する法律」(以下、「改正」少年法という。)が施行され、18歳・19歳の少年(特定少年)は少年法第61条の推知報道禁止の対象から一部除外される。しかし、除外されるのは公訴を提起(起訴)された場合に限られており、本掲載記事のような起訴される前の段階での推知報道は、「改正」少年法の下であっても、少年法第61条に違反する。「改正」少年法の下でも、推知報道は、起訴後の特定少年であっても無制限に認められてはならないことは、同改正に際しての衆参法務委員会附帯決議も指摘するところであるが、ましてや、本件掲載記事のような起訴前の特定少年の推知報道が違法であることは明白であり、断じて許されない。
株式会社新潮社は、1997年、2005年、2006年、2013年、2015年及び2017年にも少年事件に関する記事の中で実名及び顔写真を掲載し、当会や日本弁護士連合会はそのたびに抗議声明を出し、少年法第61条の遵守を求めた。それにもかかわらず、少年法改正直後に、施行後であっても違法となることが明白な推知報道に及んだことは極めて遺憾である。
当会は、株式会社新潮社に対し、同社の行為が少年法に反し、少年のプライバシー権及び成長発達権を著しく侵害するものとして強く抗議するとともに、今後、同社が少年の人権を侵害する報道を二度と繰り返さないことを強く求める。
また、すべての出版・報道機関に対して、少年法を遵守し、少年及び関係者の人権の保障に留意して報道を行うことを要望する。

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