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「在留特別許可に係るガイドライン」の改定に対する会長声明

2024年03月27日

東京弁護士会 会長 松田 純一

本年3月5日、出入国在留管理庁は、6月15日までに施行が予定されている出入国管理及び難民認定法の改定(以下、改定後の同法を「新法」という。)を踏まえた「在留特別許可に係るガイドライン」(以下、「ガイドライン」といい、現行のガイドラインを「現行ガイドライン」、改定後のガイドラインを「新ガイドライン」という。)の改定を発表したが、当会は、新ガイドラインについて、以下のとおり懸念を表明し、早急に適切な内容のガイドラインに改定することを求める。
新ガイドラインは、在留特別許可(以下、「在特」という。)について「例外的・恩恵的に行われる措置」と説明している(第1・2)。しかし、在特は人権保障を担保する見地から行われる措置であり、決して「恩恵的」なものではない。加えて、そもそもガイドラインが在特判断の透明性・公平性の向上を目的として策定されたものであるにもかかわらず、新ガイドラインでは、行政庁の裁量判断であることが過度に強調されており、透明性・予測可能性が後退することを懸念する。
また、在特に関する従来の判断の在り方を変えるものではないとしているにもかかわらず(第1・3)、「不法に滞在する期間が長期であること」については消極的に評価されるものとする(第2・5)。これは、現行ガイドラインで「当該外国人が,本邦での滞在期間が長期間に及び,本邦への定着性が認められること」が積極要素とされていることと正反対である。「本邦に在留している期間」については、その在留資格の有無にかかわらず、日本社会への定着性を示すものとして積極要素として重視すべきである 。
さらに、退去強制令書が発付された後の事情変更等は原則として考慮されないと明示しているが(第3(注4))、現行ガイドライン下では退去強制令書発付後の事情変更等も当然に考慮されていた。上述のとおり、そもそも在特の本質は人権保障にあるところ、退去強制令書発付後の事情変更を考慮しなければ、適切に判断され得るはずもない。
その他にも、本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性を積極的に評価するものとしているが(第1・3)、具体的な規定では実際の判断が親の事情に左右されうる内容となっていること(第2・2(3))、本国との結びつきが顕著なことが消極要素とされていること(第2・9)、新法第50条第1項但書 の「特別の事情」について過度に狭く解していることなど、問題点が多い 。また、仮放免の条件違反、納税義務違反、不法入国や退去命令に従わなかったこと等についても消極要素とされているが(第2・3及び4)、軽微な違反ややむを得ない事情がある場合も多く想定されるところ、新ガイドラインでは消極要素として過度に重視されるおそれがある点も問題である。
当会は、憲法及び国際人権諸条約を踏まえ、子どもの利益や家族の結合、日本人又は特別永住者との婚姻関係や無国籍性への十分な配慮を求めた新法参議院附帯決議第14項の趣旨に沿って、早急に新ガイドラインを適切なものに改定することを求める。

以上

※1 2024年3月7日付意見書 第2・5に同旨
※2 新法第50条第1項但書では、「無期若しくは一年を超える拘禁刑に処せられた者」等について「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」がある場合に限って、在特が認められることとされている
※3 新法下における在特の運用については、2024年3月7日付意見書 第2・5を参照されたい

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