最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明
2025年06月24日
東京弁護士会 会長 鈴木 善和
東京都区部の消費者物価指数(総合指数)は、前年同月比で45ヶ月連続で上昇しており、今年5月(中旬速報値)は111.1(2020年=100)となり、前年同月比で3.4%上昇している。特に個別費目中食料の速報値は123.2(2020年=100)、前年同月比は5.8%上昇となり、物価上昇が低所得者を直撃している。東京都の最低賃金は、令和6年10月1日から50円引き上げられ、時間額1163円となったものであるが、その上昇幅は上記のような物価高による目減りによって相殺されてしまい、労働者の生活水準の底上げを図るには極めて不十分である。
政府の経済財政諮問会議における「経済財政運営と改革の基本方針 2025」(「骨太の方針2025」)でも、第2章(賃上げを起点とした成長型経済の実現)で、中小企業・小規模事業者の賃上げの促進を謳い、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」とされており、その方向性は歓迎すべきものであるところ、近年の物価上昇基調を考えれば、中小企業・小規模事業者の賃金を実質的に底上げするには、「2020年代に1500円」という政府目標はできる限り前倒しで達成される必要があり、最低賃金額はより速やかに大幅な引き上げが行われるべきである。
もっとも、最低賃金の大幅な引き上げに際しては、中小企業に対する手当ても必要である。最低賃金に合わせて賃金を引き上げようとする場合には、法人税・所得税の税額控除等をさらに進めるとともに、社会保険料の事業主負担を減免する必要があるし、助成金等も検討すべきである。
また、中小企業が賃金上昇分を価格に転嫁することが妨げられてはならない。このため、取引先に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律が禁止する優越的地位の濫用を防ぎ、下請代金支払遅延等防止法に違反しないよう、公正取引委員会と中小企業庁が監視・指導を進めるべきである。
当会は、中央最低賃金審議会、東京地方最低賃金審議会及び東京労働局長に対し、労働者が健康で文化的な生活を営めるよう最低賃金額を大幅に引き上げることを、政府に対しては大幅な引き上げを進めるため中小企業を支援することを、公正取引委員会及び中小企業庁に対しては労務費の価格転嫁を可能とする公正な取引を確保することを、それぞれ求めるものである 。
印刷用PDFはこちら(PDF:85KB)