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死刑執行に強く抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2025年06月27日

東京弁護士会 会長 鈴木 善和

本日、東京拘置所において、1名の死刑が執行された。2022年7月26日に1名の死刑が執行されて以来の約2年11ヶ月ぶりの死刑執行である。

鈴木馨祐法務大臣は、記者会見において記者団の質問に答え、死刑執行の理由について、本件殺人事件の被害者が短期間で多数に及ぶことを強調し、「社会に大きな衝撃、そして不安感を与えた事件」「死刑制度は、世論調査でも83%の国民が支持しており、裁判所の判断による刑罰を執行することは社会正義の実現のために必要である」旨の説明をした。

しかし、死刑は、あらゆる人権の根源である生命を国家が剥奪するという最も苛烈な刑罰であり、近代人権思想の中では『いかに重大な犯罪を犯した者であっても、国家が個人の生命まで奪う刑罰の存在が許されていいのか』という根本的な問いが投げかけられている。

また、誤判の恐れがあるか否かにかかわらず、刑罰というものは、本来、犯罪への「応報」「懲らしめ」ではなく、罪を犯した者の「更生」「教育」により社会全体の安寧に資するものであるべきである。本年6月に懲役刑と禁錮刑が一本化されて新自由刑(拘禁刑)に再編する改正刑法が施行されたのも、そのような趣旨に基づくものである。しかしながら、死刑は、我が国の刑法典の下で、罪を犯した者の更生を指向しない唯一の刑罰であり、本来の刑罰制度の理念と相容れない異質なものである。

死刑の廃止または執行の停止は国際的潮流となっており、死刑を国家として統一して執行している国は、OECD加盟国の中では日本だけである。国連(自由権規約委員会、拷問禁止委員会、人権理事会)は、日本に対して、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討すべきであるとの勧告を何度も行っている。

昨年11月に発表された、国会議員、学識経験者、警察・検察出身者、弁護士、経済界、労働界、被害者団体、報道関係者、宗教家及び文化人ら有識者による「日本の死刑制度について考える懇話会」の報告書では、委員16名全員の一致で、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」を提言している。

にもかかわらず、内閣や国会のもとで死刑制度に関する根本的な問題を検討することなく、今回、政府が2年11か月ぶりの死刑執行に踏み切ったことは、暴挙というほかない。

当会は、あらためて、本日の死刑執行に対して強く抗議し、死刑制度を廃止すること、死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを求める。

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