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80回目の終戦の日を迎えて民間戦災者に対する援護法の制定を求める会長声明

2025年08月15日

東京弁護士会 会長 鈴木 善和

今年も8月15日を迎えました。80回目の終戦の日です。アジア太平洋戦争の末期、制海権と制空権を失った我が国を襲った空襲等により、多くの方々の尊い生命が奪われました。一命をとりとめた生存者であっても、その心身に障害や傷跡を受けたことで、多年にわたり多大な労苦を余儀なくされてきた方々がいます。

しかしこれら国策を誤ったが故にもたらされた民間戦災者に対する救済は国により拒まれ続けてきました。戦争という非常事態の下で生じた被害は国民が等しく受忍しなければならないとする戦争被害受忍論によるものです。他方、旧軍人軍属に対する支給総額は延べ60兆円に及んでいます。

1975年、日弁連の人権擁護大会は民間戦災者に対する援護法制定に関する決議を採択しました。軍人軍属等にのみ限定された戦災者援護の法制は法の下の平等に反するばかりでなく、平和憲法の基本精神にも背くとするものです。

超党派の議員連盟(「空襲議連」)も結成され、先の国会では、「戦後八十年のときを迎えるに当たり、我々は、恒久の平和の実現への決意を新たにする」という言葉が盛り込まれた法案も用意されました。労苦に慰謝するための給付金総額として16億円程度を見込んだささやかなものに過ぎませんが、戦後80年となる本年の8月15日を迎える前にこの法案を成立させるという強い決意を感じさせるものでした。

しかし、このささやかな法案ですら先の通常国会ではその提出すらできないままで終わりました。法案の成立の遅れは、労苦に報いるべき方々が刻々と報いられることなくお亡くなりになることを意味します。

8月15日は、戦争の悲惨さを風化させず、平和への深い思いを新たにし、再び戦争の惨禍がおこることのないようにすることを決意する日です。そのためにも、軍民格差と戦争被害受忍論の克服は欠かせません。

1945年3月9日深夜から10日未明の東京大空襲では東京下町が焼夷弾の無差別絨毯爆撃を受けました。死亡した住民は推定10万人以上、負傷者約40万人、焼失家屋は約26万8千戸、被災者は100万人にのぼるといわれます。名古屋、大阪と大空襲が続き日本各地が空襲に見舞われました。4月1日の沖縄本島上陸、8月6日のヒロシマ、8月9日のナガサキと続き、国土は焦土と化し各地で民間の無辜の人々が戦禍に見舞われました。

当会は、戦後80年の節目であり被災者が待ったなしの状況にある本年中に、民間戦災者に対する援護法が成立することを強く求めます。

いうまでもなく、アジア太平洋戦争では、アジアの国々に対して甚大な被害を与えました。加害の歴史に学ぶことの重要性は片時も忘れてはなりません。

当会は、先の戦争における全ての犠牲者に対し哀悼の意を捧げるとともに、戦争をしない、させないとの決意を新たにし、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のために、これからも平和を訴え続けて参ります。

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