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8月15日を迎えての会長談話

2025年08月15日

東京弁護士会 会長 鈴木 善和

本日は、1945年8月15日に日本がポツダム宣言を受諾したことが玉音放送により公表されてから、ちょうど80年目の節目の日を迎えます。

アジア太平洋戦争において、日本は、広島・長崎への原爆投下、東京大空襲等の甚大な被害を受けました。しかし、同時に、日本がアジア・太平洋の諸国を侵略し、現地に多大な被害を与えたことも事実です。このような侵略戦争を支えた要因に軍国主義と国家神道があったことも忘れてはなりません。

このように悲惨な被害を受け甚大な被害を与えたこの戦争を深く反省して戦後制定された日本国憲法は、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の三つを基本原理としています。

個人が国家や他者から生き方を強制されることなく自由を享受できるためには、平和のうちに生存できることが前提となります。それ故、日本国憲法は徹底した平和主義に立ち、その前文で全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認するとともに、第9条において戦争を放棄し、第20条において信教の自由のみならず政治と宗教の分離(政教分離)を定め神社神道を含めいかなる宗教も国教的性格を持つことを否定しました。日本国憲法を審議した帝国議会において、条約及び確立された国際法規の遵守についての条項が加えられたのも、国際法違反の戦争に及んだことへの反省と国際社会における法の支配の確立を求めるがためのものです。

しかし昨今、世界では、残念ながら平和と人権を揺らがせる事態が多発しています。ロシアによるウクライナ侵攻は開始以来3年、イスラエルによるパレスチナへの報復攻撃は開始以来1年半を過ぎ、ロシアのプーチン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相らには国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪の嫌疑で逮捕状が出されています。しかし未だ収束の兆しは見えず、無辜の民間人犠牲者が増え続けるだけでなく、パレスチナのガザ地区においては目を覆いたくなる深刻な飢餓が広がっています。

民主主義のリーダー的存在であったはずの米国では、大統領令により、司法や大学に対する攻撃が行われ、国際的な協定からの離脱や対外的な援助の停止等の平和的・協調的な国際秩序に逆行した姿勢が続いています。

国内においても、日弁連及び全国52の単位弁護士会全てが憲法違反であるとの反対声明を発出した安保法制のもとで、敵基地攻撃能力の保有や殺傷能力のある武器の輸出を可能とする等、平和主義が大きく揺らいでいます。また、閣僚や自衛隊幹部らによる靖国神社への参拝等が繰り返される等、前述した政教分離の原則が蔑ろにされています。

国際的にも国内的にも平和への危機が差し迫っている現在、日本国憲法が立脚する法の支配や平和主義の原理は一層その重要性を増しており、日本はこれらの原理が広く共有され実現されるよう、国際的にも積極的に役割を果たすことが期待されています。

当会は、本日、先の戦争における被害と加害の歴史を振り返り、日本国憲法とその原理の意義を再確認するとともに、基本的人権が一層手厚く保障される社会を推進すべく邁進する決意を新たにいたします。

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