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安保法制成立後10年経過にあたり、改めて同法制が違憲であることを確認する会長声明

2025年09月19日

東京弁護士会 会長 鈴木 善和

1 2015(平成27)年9月19日に平和安全保障法制(以下「安保法制」という)が成立してから、10年が経過した。

安保法制は、2014年に安倍内閣が安全保障環境の激変を理由に行った憲法解釈を変更する閣議決定に基づいて成立したものであり、集団的自衛権の行使容認に加え、住民保護における武器使用の容認、他国の戦闘行為に対する後方支援、武器等防護などの規定が含まれている。

2 日本国憲法は、前文及び9条において徹底した恒久平和主義を定めており、政府も、歴代内閣において、憲法上、自衛のための実力行使については専守防衛・必要最小限度に限定されており、集団的自衛権の行使は憲法9条に違反するものであって現行憲法の下では認められないとの立場を堅持してきた。

しかるに、安倍内閣による憲法解釈の変更及び安保法制の制定は、歴代内閣法制局長官、最高裁判事経験者、大多数の憲法学者が反対し、日本弁護士連合会及び当会を含む全ての単位弁護士会が反対声明を発出するなか、強行採決を経て行われたものであり、実体的にも手続的にも極めて大きな問題を有していたものである。

3 このように、安保法制は、本来憲法改正手続によらなければ成立し得ない内容を憲法解釈の限界を超えて制定したものであり、憲法9条のみならず、憲法の基本原理である立憲主義にも反するものである。

4 全国22の地裁で25件の安保法制の違憲性を問う訴訟が提起された 結果、2023年12月5日に仙台高裁が言い渡した判決は、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする集団的自衛権の行使が、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況が、客観的、合理的に判断して認められる場合にのみ限定されることを前提として、違憲性が明白であると断定することまではできないとした。

当該判決は、一連の訴訟中初めて一定の憲法判断に踏み込んだ点で評価できるとともに、集団的自衛権の行使を憲法適合的に行うことは実際には困難であって、不可能に近いことを暗に示したものと理解できる。

一連の訴訟では未だ裁判所に係属中の事件も複数あるところ、裁判所においては徒に憲法判断を回避することなく、司法として正面から問題に向き合い違憲審査権を適切に行使する姿勢が求められているというべきである。

5 当会は、我が国が、憲法が容認しない軍備増強や軍事同盟化に突き進むことなく、憲法が定める武力によらない平和の実現を尊重することを強く求めるとともに、改めて安保法制の違憲性を指摘し、その廃止または憲法に適合する内容への改正を強く求めるものである。

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