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骨太の方針2025を踏まえ、いわゆる谷間世代の活動を支援するための基金創設を求める会長声明

2025年10月29日

東京弁護士会 会長 鈴木 善和

2017年(平成29年)4月、裁判所法の改正により、第71期以降の司法修習生に対し、給付金が支給されることになった。一方、裁判所法改正前の新65期から70期までの司法修習生(いわゆる「谷間世代」)に対しては、給付金制度の遡及的適用がなく、重い経済的負担を背負ったまま取り残される状況となっている。

そもそも三権の一翼としての司法を担う法曹の養成は国の責務であり、法曹養成期間における費用については国が支給すべきものである。

それにもかかわらず国は、谷間世代への経済的負担を解消する措置を講じていない。

現在、谷間世代は、全法曹の約5分の1にあたる約1万1000人存在し、概ね8年目から13年目の法曹であり、法曹として十分経験を積んでいる世代であり、力強い司法の実現のために多方面で活躍し、司法の中核を担っている存在である。

当会は、谷間世代の問題について、日本弁護士連合会及び全国の各単位会並びに当事者であるビギナーズ・ネットと共に谷間世代の救済を求めて活動を続けてきた。そのような活動の中で、谷間世代問題に関する国会議員の応援メッセージは、2025年(令和7年)10月20日時点で386通に達している。

また、給費制廃止違憲訴訟の名古屋高等裁判所の令和元年5月30日判決では、「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならない(中略)例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値する」との付言がなされ、司法も立法府による解決に期待している。

さらに、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(いわゆる「骨太の方針2025」)本文において、「法曹人材の確保等の人的・物的基盤の整備を進める」、「国際法務人材の育成」との記載が入り、その部分について、「法教育の推進、公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援」という注記文言が挿入された。

これは、当会が日本弁護士連合会及び全国の各単位会並びにビギナーズ・ネットと共に、谷間世代法曹の経済的負担を解消すべきとの活動を続けてきたことの反映である。

今や司法の中核を担う中心世代である谷間世代が負う経済的負担を解消することは、社会の重要なインフラである司法の補強・強化に直結するところ、日本弁護士連合会は、国からの交付金により日本弁護士連合会又は同連合会が設立する財団法人等に基金を設置し、谷間世代を含む若手法曹に幅広い公益的活動、研修等を経済的に支援する基金の設立を提案している。これは、実質的な一律給付に代わりうるものとして位置づけられる。

かかる基金構想が実現すれば、谷間世代が抱く不公平・不平等感を取り除くだけに留まらず、支援を受けた谷間世代を含む若手法曹がさらに深く、幅広い公益的活動、研修等に取り組むことが可能になり、力強い司法を実現し、司法を利用する全国民の権利利益に資することになる。

当会は、引き続き谷間世代に対する是正措置を求めていくことを表明するとともに、骨太の方針2025を踏まえ、国及び関係機関に対し、日本弁護士連合会が提唱する基金構想の早期実現を強く求める。

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