佐賀県警察科学捜査研究所技術職員によるDNA型鑑定の不正行為に関する会長声明
2026年03月31日
東京弁護士会 会長 鈴木 善和
昨年(2025年)9月8日に発表された佐賀県警察科学捜査研究所の技術職員(以下「当該職員」という)によるDNA型鑑定の不正行為(以下「本件不正行為」という。)について、警察庁は、昨年11月27日に続き、本年2月12日に佐賀県警に対する特別監察の中間報告を公表した。
佐賀県警察(以下「佐賀県警」という)は、当該技術職員が担当したDNA型鑑定のうち不正行為が確認されたものが130件あったものの、佐賀地方検察庁や佐賀地方裁判所の協力を得て調査を行った結果、130件すべてについて捜査や公判に影響はなかったとしていた。しかしながら、特別監察では、佐賀県警が検察庁に不正な鑑定結果を送致したものが新たに9件発覚したとした。また、特別監察を通じても、捜査中の事件に関する鑑定のうち13件について、また時効が成立している事件に関する鑑定のうち6件については、捜査への影響が生じていたかどうか明らかにできなかったとした。
2回にわたる特別監察の中間報告を通じて、捜査への影響が生じていたかどうか明らかにできなかった、すなわち捜査への影響が生じていたかもしれないとされるなど、改めて本件不正行為の問題の根深さが明らかになるとともに、捜査や公判に一切影響がなかったとした佐賀県警による調査の杜撰さが浮き彫りとなった。特別監察に関しては、佐賀県警が不正があったとした130件のみならず、当該職員が単独で実施したすべての鑑定についても調査を行っていること、一部については再鑑定を行っていること、及び、警察外部の有識者(2名の専門学者)の協力を得て、それらの学者の意見を特別監察に反映させていることなど、佐賀県警が行った調査よりは信用のおけるものとなっている。もっとも、特別監察も依然として警察内部の調査であることに変わりはなく、また特別監察においてもなお事件当事者である被疑者・被告人やその弁護人に対する調査がなされていないなど、これだけ深刻な問題に対する調査として十分とは言い難い。
実際、本件不正行為に関しては本年3月に、特別監察でも「公判に使用されていないことが確認された」とされたにもかかわらず、実は、当該職員が行ったDNA型鑑定が覚醒剤取締法違反の公判で証拠として提出・使用され、それが有罪判決の柱となっていたと佐賀県弁護士会が発表した。また、同月、当該職員自身が本件不正行為によって起訴された刑事事件の起訴状の記載によれば、当初の佐賀県警が発表した期間を超えて不正行為が行われていた疑いがあることが分かったとの報道がなされている。
本件不正行為は、DNA型鑑定はもちろん科学的証拠についての信用性を根底から損なわせる極めて重大な不正であると言う他ないが、本年3月に入ってからも本件不正行為に関する新しい情報がもたらされ、その実相はすでに把握されているよりも、さらに深刻なものであった疑いが濃厚である。
当会としては、この深刻な不正行為の全容が明らかにされ、徹底的な再発防止策が全国的に取られるよう強く求める。
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