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死刑執行に関する会長声明

2006年12月25日

東京弁護士会 会長 吉岡 桂輔

 本日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名の計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
 今回の死刑執行は2005年9月16日の2名の死刑執行に続くもので、1993年に死刑の執行が再開されて以来の被執行者の数は51名に達している。
当会は、これまで、死刑執行に際しては、その都度、会長声明ないし談話を発表し、法務大臣に対して、(1)死刑確定者の処遇の現状を含め、死刑制度全般に関する情報を公開すること、(2)国連や欧州評議会の動向を考察し、死刑廃止の是非を含め、わが国の刑事司法、刑罰制度のあり方の議論を国民的規模で行うこと、(3)死刑執行に一層の慎重を期し、死刑制度についてのこれら議論が尽くされるまでは、死刑の執行を行わないことなどを一貫して要望してきた。
1989年12月、国際人権(自由権)規約第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)が国連総会で採択され(1991年に発効)、1997年4月以降、毎年、国連人権委員会(2006年に国連人権理事会に改組)が「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で、日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行ってきた。
国際人権(自由権)規約委員会は、1993年11月と1998年11月の二度にわたって、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告を出している。
死刑廃止条約が採択された後、世界の多くの国々で死刑が廃止されている。
アジアにおいても、フィリピンのアロヨ大統領は、本年6月24日、死刑廃止法に署名して、1994年に復活していた死刑の廃止を実行し、韓国、台湾など他のアジア諸国においても、死刑制度の廃止や執行の停止が検討されており、死刑廃止や執行停止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
当会は、本年12月14日、長勢甚遠法務大臣に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を行わないよう要請した。しかるに、当会の事前の要請にもかかわらず、死刑が執行されたことは、誠に遺憾である。
当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、法務大臣に対しては、死刑執行を差し控えて、死刑制度のあり方について議論を行うなど当会が再三にわたって表明してきた事項の実現に向けて誠実に対応されることを重ねて要望する。