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死刑執行に関する会長声明

2009年07月28日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

本日、大阪拘置所において2名、東京拘置所において1名の合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。

 福田内閣時代、鳩山邦夫法相、保岡興治法相を通して一昨年12月から昨年9月までという短期間に16名の死刑が執行された。麻生内閣に入ってからも、森英介法相が昨年10月に2名の執行を認めたこと、今年1月29日に4名の執行を認めたことに続き3名の死刑執行が行われたのである。結局、昨年は15名の確定者の死刑執行が行われ、今年に入ってからも7名の死刑が行われたことになり、大量の死刑執行の流れが定着したものではないかと危惧される。

 しかし、死刑の廃止または執行の停止は国際潮流であり、日本における現在の死刑の執行状況は突出しており、日本は世界の潮流の中で、孤立化の途をたどっていると言わざるを得ない。
2008年12月18日には国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が、一昨年を上回る圧倒的多数の賛成で採択された。
2008年10月には、国際人権(自由権)規約委員会の日本の人権状況に関する第5回審査の総括所見において、死刑制度については、政府は世論に拘わらず死刑廃止を前向きに検討すること、死刑確定者の処遇及び高齢者・精神障がい者への死刑執行に対し、より人道的な対応をとること、死刑執行を事前に告知すること、恩赦・減刑・執行の猶予が利用可能となること、必要的上訴制度を導入し、再審・恩赦の請求に執行停止効を持たせること、そして再審弁護人との秘密接見を保障することが勧告された。
このように、死刑という刑罰を巡る国際潮流は確実に死刑の執行停止あるいは死刑の廃止に向けて動いている。ヨーロッパでは、死刑廃止がEUの参加条件となっている。死刑存置国であるアメリカ合衆国でも、死刑廃止州が拡大している。アジアにおいても、1994年フィリピンは一旦復活していた死刑を再び廃止し、韓国では10年以上死刑執行が行われず、事実上の死刑廃止国とみなされている。

 無期懲役刑が確定した足利事件では、本年6月23日には、再審開始決定がなされたが、不確実な技術だったDNA鑑定に基づいて死刑判決が言渡され、昨年死刑が執行された飯塚事件についても注目が集まっている。誤った死刑判決の危険性が存在するのである。また、本年5月21日には裁判員制度が施行され、一般市民からは死刑判決に関わることについて不安の声も聞かれる。

 日本弁護士連合会は、2002年11月に「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的論議を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱している。

 当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明すると共に、法務大臣に対しては、刑事実務家の立場を尊重し、当会のこれまで再三にわたって表明してきた要望の実現に向けて誠実に対応するよう重ねて求めるものである。