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繰り返される外国籍会員の任命上申拒絶に対する会長声明

2010年02月05日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

 当会が行った韓国籍会員の民事調停委員推薦に対し、2010年(平成22年)2月3日、東京地方裁判所から当会に対し、「民事調停委員は公権力の行使に携わる公務員に該当する」ことから、外国籍会員の就任は認められず、推薦会員を最高裁判所に任命上申しない旨の連絡があった。

 当会は、同裁判所より、2006年(平成18年)に外国籍会員の司法委員任命上申、2008年(平成20年)に外国籍会員の民事調停委員任命上申をそれぞれ拒絶されている。今回が3度目の上申拒絶であり、かかる対応を当会は到底受け入れることができない。

 過去2度にわたる推薦拒絶に対し、当会はそれぞれ意見書を提出して抗議するとともに、裁判所の司法委員・調停委員について、日本国籍の有無にかかわらず適任者を任命する扱いとするよう求めてきた。

 これに対し、東京地方裁判所は、「公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには(法令の定めなくして、当然に)日本国籍を必要とする」と主張し、従前の対応を繰り返している。しかしながら、法令に根拠のない基準を創設し、当該公務員の具体的な職務内容を問題とすることなく、日本国籍の有無で差別的取り扱いをすることは、国籍を理由とする不合理な差別であり憲法14条に違反するというべきである。

 仮に、上記の裁判所の立場に立ったとしても、司法委員・調停委員の役割は、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識をもとに、当事者間の合意をあっせんして紛争の解決に当たるというものであり、職務の性質上当事者の権利を制約することは想定されていない。したがって、その職務は公権力の行使にはあたらず、裁判所の主張を前提としても、外国人の司法委員・調停委員就任を認めないことは不合理である。

 簡易裁判所、家庭裁判所で扱われる紛争が国際化、多様化している今日、多くの市民の健全な良識と感覚を司法に反映させることは紛争解決を容易にするものであり、外国人であることのみを理由として司法委員・調停委員への任命を拒否することには合理性を見い出しがたい。ことに今回、調停委員としての任命上申を拒否された推薦会員は、在日韓国人として永住資格を有し、司法修習を終え、弁護士としての経験を積み、調停委員としての能力、適格性を十分に有している。

 よって、当会は、東京地方裁判所に対し、推薦会員の任命上申を改めて強く求めるとともに、最高裁判所に対し、日本国籍を司法委員・調停委員の選任要件とするとの取り扱いを速やかに変更し、外国籍司法委員・調停委員の任命を認める扱いとするよう求めるものである。