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自衛隊のイラクからの即時撤退を求める会長声明

2004年04月09日

東京弁護士会 会長 岩井 重一

4月8日、イラクで民間の日本人3人が武装勢力に身柄を拘束されるという事態が生じ、武装勢力は、自衛隊を3日以内に撤退させなければ殺害するとしている。このような暴力による脅迫行為は断じて許されるべきではない。
ところで、当会は、かねて、イラク特別措置法の制定については、同法が他国領土での武力行使を禁じている憲法に違反するおそれが大きいとして反対を表明した。さらに、政府がイラク特別措置法に基づいて自衛隊派遣の概要を閣議決定した際にも、イラク全土が戦闘地域にある状況から、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」との同法の基本原則から、もはやイラクに自衛隊等を派遣することは不可能であるとの会長声明を発した。
そして、自衛隊の派遣は、国連の要請もイラクの同意もなく米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に協力しようとするものにほかならず、このような状況下で、イラクに自衛隊等が派遣されるならば、自衛隊員やNGO関係者などイラク国内の日本人が米軍の協力者として広く攻撃の標的となる事態が発生するおそれが極めて高いと指摘した。
しかしながら、政府は、自衛隊をイラクに派遣し、この度,不幸にも、恐れていた事態が生じてしまった。もとより、このような暴力行為を許すべきではなく、政府は人質の救済に全力を尽くすべきことはもちろんである。
しかし、今回の自衛隊派遣は、憲法に違反するものであり、しかもイラク特別措置法にすら違反する行為であることは明らかであって、それによって生じた今日の事態を打開し、3人の生命を守るためにも、イラクから自衛隊は撤退すべきである。この自衛隊の撤退は、決してテロ行為に屈するものではなく、憲法に違反する行為を是正するものにほかならない。
当会は、政府に対し、自衛隊の即時撤退を強く求めるものである。
もとより、わが国は、国際社会の一員として、イラク復興に対する人道支援には十分な尽力をする責務があるが、それは、他国から武装した軍隊と思われる自衛隊を派遣するという方法によるのではなく、戦争を放棄し、一切の戦力の保持を禁止した憲法の平和主義にのっとった方法によりなされるべきである。