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司法修習生の給費制の堅持を求める緊急声明

2004年06月07日

東京弁護士会 会長 岩井 重一

司法制度改革推進本部法曹養成検討会において、司法修習生の給費制廃止と貸与制への移行が議論され、2003(平成15)年12月の検討会では貸与制に関する事務局案が示された。
これに対し、日本弁護士連合会ならびに多くの単位会は給費制維持を求める声明を次々と発表したが、2004(平成16)年6月15日の検討会において、貸与制の導入に向けた意見取りまとめがなされる可能性が極めて高い情勢となっている。
当会は、貸与制への移行を容認する検討会の基本的方向性について、給費制維持を求める会長声明を昨年9月18日に発表したが、検討会において給費制廃止と貸与制への移行が決められようとする緊迫した状況にかんがみ、あらためて給費制堅持を求めるものである。
すなわち、給費制は、司法修習生の生活を保障することによって修習に専念させることを目的としたものであり、司法修習制度と不可分一体のものである。給費制を廃止することは修習専念義務をあやうくするものといわざるを得ない。
また、法曹は、国民の権利を擁護し、法の支配を実現することを使命とするものであり、優れた人権感覚を有し、高い倫理観をもつ者が担い手でなければならず、そのような人材は国民一般から幅広く求められるべきものである。給費制を廃止することは、一部の経済的余裕のあるごく限られた階層の者でなければ法曹の職につけないという弊害を招くおそれが強く、容認しがたいものである。
給費制は法曹、とりわけ弁護士の公益性を制度的に担保する役割を果たしてきたものであり、その廃止が法曹の在り方に重大な影響を及ぶすことは明らかである。
貸与制の導入によって、上記の弊害が是正されるものとはいえず、かえって多くの新人が法曹の職の第一歩を踏み出したときから多額の債務を負担するという事態を生じさせることになり、自由闊達な法曹としての活動を萎縮させるおそれがある。
よって、当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、市民のための司法改革をさらに推進する明日の司法の担い手である司法修習生の給費制の堅持を強く求める。