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言論の自由に関する声明―加藤紘一邸放火事件に関連して

2006年09月28日

東京弁護士会 会長 吉岡 桂輔

 本年8月15日、山形県鶴岡市の加藤紘一衆議院議員の実家、及びこれに隣接する事務所が全焼する事件が発生し、その後、右翼団体の元幹部が逮捕され、現住建造物放火罪で起訴された。報道によれば、この放火事件は、小泉首相の靖国神社参拝に対する加藤議員の批判的な言論に反発したものと伝えられている。
戦前の歴史に学ぶまでもなく、暴力により言論が封殺されるとき、どのような社会が招来されるかは容易に想像できるところである。
自由な言論は民主主義社会の根幹をなすものであり、憲法が保障する基本的権利である。これが卑劣な手段により侵害され、すでに発生後1ヶ月以上経過しているにも拘わらず、この事件に関する報道は僅かであり、マスコミ等の論評も極めて乏しい。
当会は、同種事件がとぎれることがない情況に鑑み、マスコミを含め、自由な発言や意見表明をためらう社会的風潮が生じるならば、民主主義の危機として受け止めなければならないと考えている。そこで、今般の放火事件に関し、憲法が保障する言論の自由、とりわけ政治的意見表明の自由の侵害は決して許されるものではなく、このようなことのない社会を構築するために引き続き努力することを表明するものである。