東京弁護士会

犯罪被害者等参加制度関連法案に反対し、参議院での慎重審議を求める声明

2007年06月04日

東京弁護士会 会長 下河邉 和彦

 本年6月1日、犯罪被害者および遺族(以下「犯罪被害者等」という。)の刑事手続参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が衆議院で可決され、参議院に送付された。
犯罪被害者等がより充実した経済的補償を受けられるよう、また被害後すみやかに公費による弁護士の支援を受けられるよう、必要な法制度の整備がなされるべきは当然である。
しかしながら今回の法案のように、犯罪被害者等が刑事裁判手続に当事者として直接参加する制度は、必ずしも犯罪被害者等の救済・支援にならないばかりでなく、近代刑事司法の理念に反し、刑事裁判における被告人のための憲法上の適正手続保障をないがしろにしかねないものとして反対せざるを得ない。
第一に、この参加制度は、近代刑事司法の構造を大きく変容させかねないものである。
近代刑事司法においては、起訴および訴訟追行を国家機関である検察官にのみ認め、被告人の無罪推定原則のもとに、有罪立証は検察官の責任とされて、被告人・弁護人側はこれを弾劾するという二当事者対立構造が取られてきた。
ところが、この参加制度においては、犯罪被害者等は、一定の制約があるとはいえ、検察官とは別個の当事者の立場で、証人や被告人に尋問したり、求刑について意見を述べたりすることができ、そこに報復感情といったものが影響してくることは否定できない。被告人・弁護人は検察官だけでなく、犯罪被害者等とも対峙しなければならず、被告人の防御権の行使にとって負担が加重となることは避け難い。
第二に、この参加制度は被告人を萎縮させて、刑事裁判における真実の発見にとって支障を来す虞がある。
事件に至った経緯にはいわば様々な事情があるものであり、真実発見のためには被告人側にその言い分を十分に述べさせることが重要となるが、被告人は事件の結果の重大性と裁判の重さに圧倒されて、萎縮してしまうことが多い。法廷で目の前に犯罪被害者等がいることによって、被告人が一層萎縮してしまう虞が強いと言わざるを得ない。
第三に、この参加制度は、裁判員裁判の裁判員に過度に影響を与えてしまう虞がある。
そもそも裁判員裁判はこのような犯罪被害者等参加制度を想定しておらず、その影響について検討されたことがない。犯罪被害者等が強い被害感情、報復感情を表明することによって、特に量刑の判断において、裁判員の心理面に過度に影響を与えてしまう虞は否定できない。
第四に、この参加制度は、必ずしも犯罪被害者等のすべてから支持されている制度とは言えない。
衆議院法務委員会の質疑においても、上記参加制度がかえって犯罪被害者等に精神的苦痛を与えたり、負担になるとして、強い懸念を表明する被害者団体代表の意見も表明されている。犯罪被害者等の間でも意見が分かれているなかで、このような参加制度の実施に踏み切るのは問題である。
当会は、今回の法案が提出された際にも反対の声明を発表したところであるが、今回の衆議院の議決を受けて、あらためて今回の法案の被害者等参加制度に反対し、参議院において慎重に審議することを強く求めるものである。

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