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死刑執行に関する会長声明

2007年08月23日

東京弁護士会 会長 下河邉 和彦

 本日、東京拘置所において2名、名古屋拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
今回の死刑執行は、昨年12月25日の4名、本年4月27日の3名に続くもので、この8ヶ月の間に合計10名となった。1993年に死刑の執行が再開されて以来、死刑の執行された者も57名に達している。
当会は、これまで、死刑執行に際して、その都度、会長声明ないし談話を発表し、一貫して法務大臣に対して、(1)死刑確定者の処遇の現状を含め、死刑制度全般に関する情報を公開すること、(2)国連や欧州評議会の動向を考察し、死刑廃止の是非を含め、わが国の刑事司法、刑罰制度のあり方の議論を国民的規模で行うこと、(3)死刑執行に一層の慎重を期し、死刑制度についてのこれら議論が尽くされるまでは、死刑の執行を行わないことなどを要望してきた。
1989年12月、国際人権(自由権)規約第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約)が国連総会で採択され、1997年4月以降、毎年国連人権委員会(現在は国連人権理事会)が「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で、日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」との呼びかけを行ってきた。
国際人権(自由権)規約委員会は、1993年11月と1998年11月の2回にわたって、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告を出している。
国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解が2007年5月18日に示されたが、その中で、我が国の死刑制度の問題を指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことが勧告されている。
死刑廃止条約が採択された後、世界の多くの国々で死刑が廃止されている。アメリカ合衆国の死刑存置州でも、死刑の宣告数、処刑数が減少しており、アジアにおいてもフィリピンは1994年に一旦復活していた死刑を再び廃止し、韓国、台湾などでも、死刑制度の廃止や執行の停止が検討されており、欧州連合(EU)は、昨日、米テキサス州での死刑執行についてその停止の呼び掛けを行うなど、死刑廃止や執行停止が国際的な潮流となってきていることは明らかである。
当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、法務大臣に対しては、死刑執行を差し控えて、死刑制度のあり方について議論を行うなど、当会がこれまで再三にわたって表明してきた要望の実現に向けて、誠実に対応されることを重ねて要望する。