東京弁護士会

死刑執行に関する会長声明

2008年10月28日

東京弁護士会 会長 山本 剛嗣

1.死刑確定者2名の死刑執行

 本日、福岡拘置所において1名、宮城刑務所仙台拘置支所において1名の合計2名の死刑確定者に対する死刑が執行された。
福田内閣が組閣されて以降、鳩山邦夫法相時代には、昨年12月に3名、本年2月に3名、本年4月に4名、本年6月に3名と、歴代法相下では最大の13名の死刑が短期間に執行され、保岡興治法相時代にも本年9月に3名の死刑が執行された。今回麻生内閣の森英介法相は、法相就任後ほぼ1ヶ月で執行を認めており、福田内閣を上回るペースで死刑が執行されたことになり、現在の日本は死刑の大量執行国となっている。
福岡拘置所において死刑を執行された者は、逮捕以来一貫して無罪を主張している者であり、宮城刑務所仙台拘置支所で死刑を執行された者は、第一審は無期懲役の判決が言い渡され、高裁で死刑判決が言い渡された者であるが、いずれも上告確定後約2年以内に死刑が執行されている。一定期間(2007年までの10年間で執行された死刑囚は刑が確定してから平均して8年間拘置所に拘留されている)経過後に死刑を執行するという、死刑に対する慎重な態度は既に反古にされていると言ってよい状態である。

2.死刑執行を巡る国際的政治状況

  • 1989年12月15日、国連総会で、国際人権規約第二選択議定書(死刑廃止国際条約)が採択された。
  • 2007年5月18日、国連の拷問禁止委員会は、日本政府報告書に対する最終見解を示し、日本における死刑制度の問題を指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことを勧告した。
  • 2007年11月15日、国連総会第3委員会は、「全世界的な死刑の執行停止を求める決議」を採択し、死刑存置国に対して、死刑の廃止を視野に入れて執行の停止を確立すること等を求めた。

このように、死刑という刑罰を巡る国際潮流は確実に死刑の執行停止あるいは死刑の廃止に向けて動いている。
ヨーロッパでは、既に死刑存置国は野蛮な国という国際常識が形成されており、死刑廃止がEUの参加条件となっている。死刑存置国であるアメリカ合衆国でも、死刑廃止州が拡大している。
アジアにおいても、1994年フィリピンは一旦復活していた死刑を再び廃止し、韓国では10年以上死刑執行が行われず、事実上の死刑廃止国とみなされている。

このような国際潮流の中で、日本における現在の死刑の執行状況は突出しており、日本は世界の潮流の中で、孤立化の途をたどっている。

3.死刑と人権問題

最近重大犯罪事件を巡り、一部のマスコミが加熱報道し、国民の応報感情を煽っているとしかとらえかねない状況となっている。
これに対し、一部の法学者、法律実務家、宗教家、刑務官、マスコミから繰り返し死刑の合憲性、必要性、相当性等について疑問が呈されている。 平成20年5月には、自民、民主、公明、共産、社民、国民新党の議員で構成される「量刑制度を考える超党派の会」が結成され、死刑と無期刑の間に仮釈放を認めない終身刑の創設が提案されるなど国会の中でも死刑についての論議が始まっている。 このような状況の中で、少なくとも死刑という制度は刑罰の中では例外的な制度であり、慎重に判決がなされ、執行されるべきであるという点については、刑事実務家の間でかなりの程度でコンセンサスが得られていると考えられる。

4.当会の立場

当会はこれまで死刑執行に際して、その都度会長声明・談話を発表し、一貫して法務大臣に対して

  • 死刑確定者の処遇の現状を含め、死刑制度全般に対する情報を公開すること
  • 国連や欧州評議会の動向を考察し、死刑廃止の是非を含め、わが国の刑事司法、刑罰制度のあり方の議論を国民的規模で行うこと
  • 死刑執行に一層の慎重を期し、死刑制度についてのこれらの議論が尽くされるまでは、死刑の執行を行わないこと
  • を要望してきた。

    当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明すると共に、法務大臣に対しては、刑事実務家の立場を尊重し、当会のこれまで再三にわたって表明してきた要望の実現に向けて誠実に対応するよう重ねて求めるものである。

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