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海賊行為対処法案に反対する会長声明

2009年06月18日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

 ソマリア沖で頻発している海賊行為に対し、日本政府は、本年3月14日に、日本関係船舶の保護を理由に、自衛隊法第82条の「海上警備行動」を拡大解釈して、海上自衛隊の2隻の護衛艦を派遣したが、さらに、自衛隊による多国籍船舶の保護と警告・威嚇以上の船体射撃行為を可能にする「海賊行為の処罰及び海賊への対処に関する法律」案(以下「海賊対処法案」という。)を国会に提出し、同法案は現在審議中である。

 しかしながら、海賊行為に対する対処のような公海上を含めた海上における人命及び財産の保護は、本来、警察活動によるべきである。

 上記法案は、自衛隊が活動する対象地域、対象船舶を限定せず、かつ海賊対処行動での武器使用基準を緩和していることから、対象海域の状況によっては自衛隊が武力行使に至るおそれがある。そのため、実質的に他国の権益保護を含め、なし崩し的に海外における自衛隊の武力行使に道を開き、恒久化させるものであり、憲法第9条の平和主義に抵触する危険性が高いと言わざるを得ない。

 ソマリア沖海賊問題は、確かに深刻な国際問題であり、国際的な協力関係の中で対処していくべきではあるが、憲法第9条の武力放棄により徹底した平和主義を掲げる我が国としては、他の国が軍隊を派遣して海賊対策をしているからといって、安易に自衛隊派遣という憲法の禁止する武力の行使に至る危険を有する対処方法をとるべきではなく、問題の根源的な解決を図るための経済的・人道的支援や、諸外国と協力しての警察権の行使によって、船舶等の安全を保護すべきである

 よって、当会は、自衛隊の海外における武力の行使及びその恒久化につながりかねない海賊対処法の制定に強く反対する。

以上