東京弁護士会

よりよい裁判員裁判の実現に向けて(会長声明)

2009年12月25日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

 裁判員裁判は、法曹だけの手続運営に見られた不適切な慣行と訴訟活動のあり方を変え、市民の司法参加により、その健全な常識を審理に反映させ、より良い刑事裁判を実現するために導入されたものである。

 裁判員裁判の実施により、被告人の手錠・腰縄の解錠時期や法廷での着席位置などにつき改善がなされ、また、証拠開示請求制度の活用が進んだ。直接主義、口頭主義の徹底を実現するため、検察官や弁護人は、プレゼンテーション技術を活用した主張立証で、判断者に対する説得力を持たせる訴訟活動の実践に努力している。
裁判員候補者の多くが呼び出しに応じて選任手続に参加し、そして、裁判員経験者の多くが、記者会見やアンケート調査への回答で、達成感と司法参加の意義について積極的な感想を述べている。これは、裁判員が真摯に誠実に参加し、審理、評議をし、判決に関与したことを示していると評価する。

 なお、裁判員アンケートによると、弁護活動のあり方に対する評価は、分かりやすさにおいて低いものとなった。これからも、市民の方々からの評価・批判を謙虚に受け止め、経験交流会や研修の充実に努め、弁護技術の向上、弁護の質の向上に努めたい。

 ところで、本年12月に東京地裁で開催された覚せい剤密輸事件の裁判員裁判で、当会所属の弁護人が最終弁論において、最高裁判所の作成した量刑検索システム記載の類似事件の量刑に言及したところ複数の入力ミスがあることが明らかになり、量刑判断の目安になるデータの信頼性に疑問が呈された。
最高裁は全データの正確性を徹底的にチェックすることにしたとのことであるが、そもそも、判決書に当たって正確性をチェックする道が弁護人にのみ開かれていないことの問題性も大きい。少なくともデータベースに掲載されている判例の判決書とのチェックに弁護士会等が関与する道を開くべきであり、さらには、判決書など裁判情報の開示を積極的に行うことを検討すべきである。

 裁判員裁判を真に意義ある制度として定着させ、より良い刑事裁判を実現していくためには、なお多くの課題を乗り越えていかなければならない。否認事件、責任能力が争われる事件などに直面するこれからが正念場である。
連日的開廷が行われる裁判員裁判において、被告人の防御権、弁護人の弁護権が侵害されることのないよう、公判前整理手続きにおいて十分な証拠開示がなされ、弁護人の準備期間が確保された審理計画になっているかを検証する必要がある。また、取調べの一部録画の危険性と全部録画による可視化の必要性や、全面的証拠開示や保釈の柔軟な運用の必要性などについて、市民の広範な理解と支持を得て、さらなる改革の実現に努力する。

 裁判員裁判のスタートの年の終わりに当たって、よりよい刑事裁判の実現に向けて、二年目以降さらに取り組みを強める所存である。

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