東京弁護士会

足利事件再審無罪判決に対する会長声明

2010年03月26日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

 宇都宮地方裁判所は、足利事件の再審判決公判において、本日、菅家利和氏に対し無罪判決を言い渡し、謝罪した。

 無期懲役の判決により、逮捕以来17年半もの長きにわたり身体拘束されていた菅家氏に、ようやく一定の名誉回復がなされた。
しかし、菅家氏の失った長い年月は取り戻すことはできない。菅家氏の筆舌に尽くしがたい苦痛を思うと慄然とせざるをえない。
虚偽の「自白」を迫った警察、無辜の市民を起訴した検察官、そして真相の解明を果たせず誤判をした裁判官の責任は極めて重大である。
今回の無罪判決によってもなお誤判原因の究明は極めて不十分であると言わざるをえない。
捜査と裁判に関与する全ての関係者は、誤起訴・誤判の原因究明のための検証作業と再発防止のための施策の実行に真摯に取り組まなければならない。
誤判原因を徹底的に究明し再発を防止するためには、独立性が保障され、十分な権限を持つ公的な第三者機関としての調査委員会の設置が必要である。

 また、足利事件はDNA鑑定の問題性を明らかにした。近時は、精度が格段に増したとはいえ、神奈川県警のDNA誤登録による人権侵害事案などにもみられるように、「科学的捜査」にも深刻な課題がある。それらの課題の克服に真剣に取り組みながら、自白に頼らない捜査、立証が求められる。

 足利事件は、長期間の身体拘束のもとでの密室における長時間の取調べの危険性をはじめとして、現在の捜査・刑事裁判のあり方に誤判の原因があることを浮き彫りにした。
えん罪を防ぐには刑事司法制度の改革が必要である。当会は、取調べの全過程の録画(可視化)の実現、証拠開示制度の抜本的拡充、「人質司法」と批判されながら改善されない勾留・保釈制度の抜本的改革を強く求める。
取調べの可視化の実現を延引することは、新たなえん罪を生み出すことに荷担するに等しく、許されるところではない。早急に可視化の実現を図るべきである。

 えん罪は人権侵害の極みである。
当会は、えん罪を訴える人々の人権救済に積極的に取り組むとともに、刑事弁護に対する弁護士及び弁護士会の責任の重さを認識し、誤起訴・誤判の防止を図るため弁護活動の充実に向けて更なる努力をする所存である。

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