東京弁護士会

世田谷ビラ配布国家公務員法違反事件に関する会長声明

2010年05月13日

東京弁護士会 会長 若旅 一夫

 本日、東京高等裁判所第6刑事部は、厚生労働省課長補佐が東京都世田谷区内の警視庁職員住宅の集合郵便受けに政党機関誌を投函したという国家公務員法違反被告事件について、一審の有罪判決に対する被告人の控訴を棄却し、有罪とする判決を言い渡した。

 本判決は、本件ビラ配布が勤務時間外に職場とは無関係の場でなされているとの点につき、その行為に限ってみれば行政の中立性に及ぼす弊害が具体的・直接的に生ずるとは必ずしもいえないとしつつも、そうした行為が累積していく場合の弊害を視野に入れればその行為の規制にも合理性があるとし、原判決の有罪の結論を維持した。

  政党機関誌を郵便受けに投函したことが国家公務員法違反に問われた事件に関しては、本年3月29日に同裁判所第5刑事部が、一審の有罪判決を破棄して無罪を言い渡している。
  第5刑事部の判決は、行政の中立的運営及びそれに対する国民の信頼が重要な保護法益であるとしつつも、表現の自由の重要性に対する国民の認識が一層深まり、また、世界標準という視点を考えるよう国民の法意識が変容していることなどをふまえて、投函の行為が行政の中立的運営等の保護法益を抽象的にも侵害するものとは常識的に考えられないと判示した。当会はこの判決に対し、同日、表現の自由等の重要性を十分にふまえた判決であるとして積極的に評価する会長声明を発した。

 これに対し本判決は、表現の自由の重要性に対する国民の法意識の深まりや世界標準の視点などを十分にふまえることなく判断しており、表現の自由を制約する刑罰法規の適用に対して厳格な審査が行われたとはいえず、その問題性は極めて大きい。

 日本弁護士連合会は、2009年の第52回人権擁護大会において、裁判所に対し、市民の表現の自由に対する規制が必要最小限であるかにつき厳格に審査することを求める宣言を採択した。また当会は、葛飾ビラ配布事件に関する会長声明(2009年12月1日)において、最高裁に対し、ビラ配布を含む表現の自由の重要性に十分配慮し、国際的な批判にも耐えうる厳密な利益衡量に基づく判断を示すよう要望した。
  当会は、あらためて、すべての裁判所に対し、表現の自由が民主主義社会の死命を制する重要な人権であることをふまえ、その制約が必要最小限であるかにつき厳格な審査を行うよう強く求める。

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