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1票の較差をめぐる最高裁大法廷判決に関する会長声明

2011年03月28日

東京弁護士会 会長 若旅 一夫

平成23年3月23日、最高裁判所大法廷は、平成21年8月30日に施行した衆議院議員総選挙について、選挙区間の投票価値の較差が当時最大で2.304倍に達し、較差2倍以上の選挙区の数も増加してきていたことの主要な要因が1人別枠方式にあったとし、区割基準のうちこの1人別枠方式に係る部分は、遅くともその選挙時においては、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとした。また、1人別枠方式を含む区割基準に基づいて定められた選挙区割りそのものも、同じく違憲状態にあったとした。

その上で、大法廷は、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったものということはできないとして、違憲無効の主張を退けつつ、できるだけ速やかに区割基準中の1人別枠方式を廃止し、区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるとした。

代表民主制を採用する以上、1票の価値の平等は、憲法の本質的な要請である。その重要性に鑑みれば、平成8年と平成12年の2度にわたる総選挙を経て、平成14年7月、前年の衆議院議員選挙区画定審議会の勧告を踏まえて区割規定が改定された頃までには、選挙区割りは合理性を失っていたというべきであり、遅くとも、小選挙区制の採用に伴う激変緩和措置として1人別枠方式を導入した平成6年から10年が経過した頃までには、1人別枠方式は廃止していなければならなかった。そうであるにもかかわらず、区割規定の改正等の措置を執らなかった国会には、立法の不作為があるといわざるを得ない。

当会は、この大法廷判決を受け、国会が速やかに1人別枠方式の廃止を含む選挙区割りの改正を行い、1票の価値の較差をできるかぎり1倍に近づけるよう求めるものである。

以上