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「東電女性社員殺人事件」の再審開始決定に関する会長声明

2012年06月07日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

東京高等裁判所第4刑事部は本日、「東電女性社員殺人事件」に関するゴビンダ・プラサド・マイナリ氏の再審請求につき、再審開始及び刑の執行停止を決定した。

この事件は、1997(平成9)年3月に東京都渋谷区のアパートで女性の死体が発見されたことにつきマイナリ氏が強盗殺人の罪を問われたものである。
当初から一貫して無実を訴えるマイナリ氏に対し、一審の東京地方裁判所は2000(平成12)年4月にマイナリ氏を無罪としたが、同年5月に記録の送付を受けたばかりの東京高等裁判所は再勾留の決定をした。そして、同年12月に二審の東京高等裁判所が無期懲役の逆転有罪判決を言い渡し、2003(平成15)年10月に最高裁判所がマイナリ氏の上告を棄却して東京高等裁判所の有罪判決が確定した。
このためマイナリ氏は2005(平成17)年3月に東京高等裁判所に対して再審請求をし、請求からまる7年を経てこの度の再審開始決定に至った。
マイナリ氏は、この間十数年にわたり身体拘束された状態におかれたものであり、マイナリ氏はもとよりその家族の精神的・肉体的苦痛は計り知れないものがある。

本日の再審開始決定は、被害者の身体に残されていた体液等について再審請求後に実施されたDNA型鑑定の結果等をふまえ、マイナリ氏を犯人とするには合理的な疑いが残るとして再審開始を決定したものであり、科学的な鑑定を虚心坦懐に見つめ、“疑わしきは被告人の利益に”という刑事裁判の鉄則を貫いたものとして極めて妥当なものであると考える。また、今回の決定を踏まえて、科学捜査の一層の充実が望まれる。

当会は、検察官に対し、本日の再審開始決定について異議申立をしないよう求めるとともに、冤罪事件の救済、無用の身体拘束からの解放に向けてより一層の努力をしていく所存である。