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都市型公設事務所設立10周年にあたっての会長声明

2012年07月18日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

本年は、当会の都市型公設事務所開設10周年にあたる。

当会は、2002年6月に、「市民の法的駆け込み寺」である都市型公設事務所として弁護士法人東京パブリック法律事務所を設立した。それから10年間、当会は、4つの都市型公設事務所を設置し、今日までその活動を支援し続けている。

2004年4月には、刑事弁護の担い手の拠点となるべく、弁護士法人北千住パブリック法律事務所を設立した。同年7月には、法科大学院と連携した新たな法曹養成の担い手として弁護士法人渋谷パブリック法律事務所を設立した。その後、2008年3月には、400万人を超える人口を抱えながら十分な数の弁護士がいない多摩支部管内における司法アクセスの改善を図るべく、弁護士法人多摩パブリック法律事務所を設立した。
現在、この4つの「パブリック法律事務所」に所属する弁護士は約60名におよび、その数・規模ともに、全国の弁護士会の中で最大である。 

「市民に身近な司法を実現する」司法制度改革の理念を実現していくことは決して容易ではない。これまで、経済的・心理的な要素を含め様々な理由により、司法サービスを受けにくい状況があった。このような司法アクセスの障害を改善するためには、困難に陥った人々に積極的にアプローチをしていく、フットワークの軽い弁護士集団が必要である。東京パブリックや多摩パブリックの弁護士は、福祉や教育の関係機関とも連携しながら、法律事務所にたどり着けなかった人々に自ら出向くというアウトリーチの実践を行っている。この活動は、行政機関を含めた地域の人々に歓迎され、地域のコミュニティにおける司法の役割を大きく変えようとしている。このような活動は、東日本大震災・福島原発事故の被災者・被害者支援活動にも大いに活かされている。

被疑者国選制度や裁判員裁判の実施にあたっても、手続の適正を護り抜く情熱と刑事弁護の知識と技術の伴った弁護人の養成・確保が不可欠である。北千住パブリックの弁護士の精力的で熱心な刑事弁護活動は、刑事司法改革の時代に大きなインパクトを与えている。

法科大学院に象徴される新たな法曹養成においても、弁護士に期待される役割は大きい。渋谷パブリック法律事務所は、法科大学院のキャンパスの中に設立され、法律実務を臨床教育の中で学生たちに教えていくことで、法曹の養成に寄与している。

さらに、全国に点在する弁護士過疎地域の解消も重要な課題であるところ、当会の都市型公設事務所で養成を受け、日弁連ひまわり基金法律事務所や法テラス法律事務所等に赴任した弁護士の数は、現在で42名におよんでいる。

このように当会の都市型公設事務所がこの10年に果たしている役割は極めて大きく、今後も市民と司法との架け橋としての活動が期待されている。当会は、今秋10月に、弁護士過疎偏在対策と外国人支援を二つの大きな柱とする東京パブリックの支所を品川付近に設立し、さらに新しい動きを展開する予定である。

当会は、今後もこうした都市型公設事務所の活動を積極的に支援しながら、草の根活動の実践によって「市民に身近な司法の実現」に邁進していく所存である。