アクセス
JP EN

「東京電力女性社員殺人事件」に対する再審無罪判決についての会長声明

2012年11月07日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

東京高等裁判所第4刑事部は本日、1997(平成9)年に発生したいわゆる「東京電力女性社員殺人事件」について、検察官の控訴を棄却し、被告人のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏は無罪であるとする判決を言い渡した。 

本日の判決は、再審請求審及び再審開始決定後になされたDNA鑑定の結果などをふまえてマイナリ氏を無罪としたものである。

これは、2000(平成12)年4月に“疑わしきは被告人の利益に”の鉄則に基づいて無罪を言い渡した東京地裁の判断が正しかったことを示すとともに、かかる一審の無罪判決を覆しマイナリ氏を無期懲役とした同年12月の東京高裁判決が刑事訴訟の鉄則に反する重大な誤りを犯していたことを明らかにしたものである。 

この度の再審無罪判決は、長年に亘って冤罪と闘ってきたマイナリ氏の名誉を回復するものとして妥当な判断であるということができる。

しかしながら、本来であればマイナリ氏は、2000(平成12)年4月の無罪判決をもって刑事手続から解放されなければならなかったのであり、特段の証拠もなく安易に控訴をした検察の姿勢は批判されなければならず、いわんや東京高裁による誤判の責任は重大である。また本件は、再審請求後に新たになされたDNA鑑定の結果により第三者が犯行に及んだ可能性がはっきりしたから無罪となったものであり、このように被告人側の“無実”が明らかにならない限り再審が開始されず無罪判決を得ることができないのでは、“疑わしきは被告人の利益に”の鉄則が貫かれているとはいえず、再審の壁はいまなお不当に厚いといわなければならない。 

当会は、本件につき、第三者機関を組織して捜査、起訴、訴訟追行の過程を徹底的に検証するよう求めるとともに、この判決を契機として、刑事司法において“疑わしきは被告人の利益に”の鉄則が貫かれなければならないことを改めて確認し、かつ、冤罪事件の発生防止と救済に向けて引き続き尽力する決意である。