東京弁護士会

商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し、改正金融商品取引法施行令に同取引に関する市場デリバティブを加えることを求める会長声明

2013年10月28日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のため、内閣府副大臣は、委員の質問に答えて「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁を行った。
 不招請勧誘とは商品取引契約締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し、又は電話をかけて、商品取引契約の締結の勧誘をすることを指すが(商品先物取引法214条9号)、この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に監督権限を持つことになる金融庁が、総合取引所において取り扱われる商品先物取引については、現在おかれている不招請勧誘禁止の撤廃を検討していることを示している。しかしながら、もし、不招請勧誘禁止が撤廃されれば、総合取引所において消費者に先物取引被害を多数発生させる可能性が高まるとの重大な懸念があり、当会は、見過ごすことができない。
 商品先物取引は過去において数多の悲惨な被害を生んだ歴史があるが、その始まりは、1960(昭和35)年頃から外務員を外交に歩かせて注文を取らせる不招請勧誘による営業が横行しだしたことにある。それ以前は、顧客が訪れるのを待って営業していたため、先物取引の消費者被害は生じていなかった。それが、不招請勧誘により、自宅や職場への電話勧誘、訪問販売によって、商品先物が何であるかを知らない消費者を、密室での巧みなセールストークで取引に引き込み、取引開始後も頻繁売買に誘導して手数料を稼ぐ手法が業界の主流となって、次第に被害件数を増やし、ピーク時の2000(平成12)年から2004(平成16)年頃までは、国民生活センターの苦情相談でも毎年4000件を超える数が寄せられるなど多大な被害が集積されていった。こうした実情から見ると、先物取引被害多発の原因に、不招請勧誘の横行があることは明らかである。現在、商品先物取引業者のほとんどは、当時から不招請勧誘を中心に営業を続けていた業者である。
 2011年1月1日施行の現行商品先物取引法は、商品先物については国内公設取引所取引であっても不招請勧誘を禁止するとした。その後、商品先物取引を巡る消費者の苦情相談は激減しており、まさに不招請勧誘禁止こそが商品先物取引被害撲滅の切り札であったことが明白に示されている。
 その後、2012年8月には、経済産業省産業構造審議会商品先物取引分科会において、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」として、当面不招請勧誘禁止維持を確認する報告書がまとめられている。
 にもかかわらず、今回、上記報告書のまとめた実態の検証も何もなされないまま、不招請勧誘禁止の撤廃をいうのは、極めて不当である。不招請勧誘禁止から僅か2年余で規制を撤廃すれば、商品先物取引業者に、以前と同じく、消費者被害を多数生み出す機会を与えることになりかねない。
 すでに、総合取引所構想実現のため、金融商品取引法の定める金融商品に商品先物取引を加えた改正法が成立しており、その施行が2014年3月と迫っている中、金融庁は、現在、施行令等の改正作業に取組中である。この法改正に伴う施行令の改正において、商品先物取引については店頭デリバティブと同じく市場デリバティブも不招請勧誘禁止の適用がある取引に加えなければ(金商法施行令16条の4第1項)、総合取引所に上場する商品先物取引には、自動的に不招請勧誘禁止規定が適用されなくなる。
 よって当会は、消費者保護の観点から、総合取引所において取り扱う商品先物取引について不招請勧誘禁止を撤廃することに強く反対するとともに、改正金融商品取引法施行令には商品先物取引に関する市場デリバティブを加えるよう強く求める。

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