東京弁護士会

死刑執行に関する会長声明

2014年08月29日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

   本日、東京拘置所及び仙台拘置支所において2人の死刑囚の死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣は、一昨年12月に就任後、11人の死刑執行を命じたことになる。
   死刑は、かけがえのない生命を奪い、人間の存在を完全に否定するという不可逆的な刑罰である。また、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪い去るという取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。
   日本弁護士連合会は、昨年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
   当会は、上記の要請に対して何らの配慮もせずなされた死刑執行を到底容認することができない。
   国際的に見ると、2012年12月20日、国連総会は全ての死刑存続国に対し、死刑廃止を視野に執行を停止するよう求める決議を過去最多の111カ国の賛成多数で採択しており、反対票を投じた国は日本を含め41カ国にとどまっている。また、日本に対しては、国連拷問禁止委員会や国連人権理事会、国連規約人権委員会から死刑廃止に向けた様々な勧告がなされている。ちなみに、2012年10月現在の死刑廃止国は140カ国(10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国を含む)、死刑存置国は58カ国であって、世界の3分の2を超える国が死刑を廃止ないし執行の停止をしている。
   わが国では死刑事件について4件の再審無罪判決が確定しているうえ、近時足利事件、布川事件について裁判所は再審無罪判決を言い渡し、東電社員殺人事件の再審において無罪が確定している。さらに、死刑が執行されてしまった飯塚事件についても、精度の低いDNA型鑑定が決め手となったことに疑問が生じており、近時の科学的捜査の発達により死刑判決の見直しがなされる可能性が高くなっている。
   そして、本年3月27日には、静岡地裁が、「袴田事件」に関する袴田巌氏の第2次再審請求につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、拘置の執行停止は死刑囚の再審開始が決定された事案としては初めてのことであり、極めて異例で画期的な判断であった。
   これらは、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑の執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に示すものであり、世論においても、かつてない程死刑の存廃についての関心が高まっている。
   こうした状況において、死刑を執行する必要性があったのか、本日の死刑執行について熟考を尽したのか、あらためて問われなければならない。
   当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議し、あわせて法務大臣に対し、死刑制度の廃止についての国民的議論の開始と死刑執行の停止に向けて誠実な対応をするよう、重ねて求めるものである。

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