東京弁護士会

真の「女性の活躍推進」となる充実した法制度を求める会長声明

2014年10月01日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

   政府は、平成26年6月24日、「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」(以下「再興戦略」という)を閣議決定した。そこでは、女性の活躍推進へ向けた目標として、「待機児童解消加速化プラン」「2020年に女性の就業率(25歳から44歳)を73%(現状68%)にする」「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」(以下「2020・30」という)が掲げられ、「女性の活躍を促進することを目的とする新法の提出に向けて検討を開始することとした」とされている。これを受けて現在、総務省、厚生労働省の各審議会において女性の活躍推進のための法整備が検討されている。
   再興戦略では2020・30の目標等は、あくまで日本社会における労働力を確保することを目的とした施策として位置付けられている。しかし、世界的に見ると、2020・30は、「女性の人権保障」や「性差別の是正」という視点から取り上げられている。日本において、特に政治分野と労働分野において、指導的地位に占める女性の割合が他の先進国と比べてはるかに低いという問題に関する危機感は共通するものの、世界的な議論と政府の視点とは意義・目的を異にするものであると言わざるを得ない。
   「女性の活躍推進」の意義・目的の検討にあたっては、単なる「働き手の確保」という観点ではなく、ジェンダー平等の実現や性差別の是正、女性の人権保障を意義・目的とした施策と位置づけなければならない。
   女性労働者を取り巻く現状をみると、女性労働者のうち非正規労働者の割合は5割を超えており、男女の賃金格差は男性100に対して女性69.3である。約6割の女性が第1子出産を機に離職しており、その理由としては、仕事と育児の両立困難(26.1%)や、解雇・退職勧奨(9.0%)など、本人の意思によらずに退職を余儀なくされた割合が約35%にも上る。
   このように、女性労働者は就労意欲がありながら就労が妨げられ、賃金も低く据え置かれている現実がある。
   安倍内閣が推進する労働規制緩和(労働者派遣法の改正、職務等を限定した正社員、時間ではなく成果で評価される制度の創設等)により、長時間労働自体を禁止ないし抜本的に規制せずに正社員以外の雇用形態を増やすだけであれば、女性はいつまでも正社員になれずに低賃金の非正規雇用に据え置かれ、その結果として、自立を果たせないまま家庭責任を一身に背負う現状が固定されることになる。そうなれば、女性は家事・育児との両立を理由に非正規雇用や「限定正社員」としての職を選ばざるを得ず、出産・育児を理由とする退職にも歯止めがかからないことになる。
   こうした現状を放置したまま「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」という数値目標だけを追求するとすれば、ごく一部の正社員の女性のみが「活躍」し、その他多くの女性労働者との分断が生じかねないと考える。しかしそれでは、そのあとに続く指導的地位の担い手が育たない。
   わが国における女性労働者をめぐる現状は、上記のように根深い問題を抱えておりまた女性の貧困問題も喫緊の課題であって、こうした現状を克服せずして「女性の活躍推進」は語ることはできない。政府は、今秋の臨時国会で新法の制定を目指すとしているが、閣議決定から新法制定まで約3~4か月という拙速なスケジュールでは全体的な検討ができるとは思えない。
   女性の活躍推進は、当事者である女性のみならず、今や我が国社会の在り方を左右する重要なテーマとなった。拙速に新法を制定するのでなく、現場の女性労働者が置かれている状況を詳密に調査分析し、その意義や目的に立ち返り、十分な国民的議論を尽くした上で、真の女性活躍推進となる充実した法制度の検討をすることを求める次第である。

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